第五十一話「過去編・僅かな希望」
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今手伝う!」
「俺は大丈夫です! 早く制御盤を!」
ブランクの言葉に、ヴェールマンは制御盤の方を見た。
感染した兵士の姿はない。制御盤を操作する絶好の機会だった。
「(急がなくては……!!)」
ヴェールマンは制御盤に向かって走り出した。
地下3階の制御盤も、地下6階と同様、強化ガラスで覆われていた。
それを破れるブランクは感染した兵士数人と交戦している。
しかし、ヴェールマンにとってそんなことはどうでもいいことだ。
「(できるかどうか分からんが………!)」
右の拳を構えた。ブランクのように、強化ガラスを叩き割るために。
一切走るスピードを緩めず、制御盤に向かう。
そして、スピードを殺さずに強化ガラスを勢いよく殴りつけた。
ガシャン!!
強化ガラスを破ると同時に、警報が鳴った。
『封鎖信号を確認しました。300秒後に地下3階全域を封鎖します。フロア内にいる職員は、速やかに
外に退避して下さい。繰り返します。………』
「ブランク!」
「了解!」
ブランクは周りに群がっていた兵士達を次々と殴り飛ばし、ヴェールマンと合流した。
ブランクが来たことを確認したヴェールマンは、急いで非常用通路のドアを蹴破り、通路へ走った。
「司令、手が………」
強化ガラスを叩き割った右の拳は、ガラス片によって無数の切り傷と刺し傷ができていた。
無数の傷からドクドクと血が溢れ、右手は真っ赤に染まっていた。
「この程度、怪我とも呼べん。それに、お前ほどの無茶はしてないさ」
「しかし……」
「気にするな」
「………地上に出たら、治療くらいは受けて下さいよ」
「あぁ、分かった」
走り出して少し経つと、ヴェールマンの無線に音声が入ってきた。
『司令! 連絡が遅れてすみません! ご無事ですか!?』
「あぁ、なんとかな。どうした?」
『日本支部の装甲壁の破損が広がって、感染者が大勢………それに、フィリップが………』
「? なんだ?」
『……………発症、しました……』
ヴェールマンは一瞬、無線機を落としそうになった。
恐れていた事態の一つが現実になってしまった。
この事実をブランクにどう伝えればいい?
この事実を知ったらブランクはどうなってしまうんだ?
『しかし……どうもフィリップの様子がおかしいんです』
「………? どういうことだ?」
『発症してはいるんですが…………感染者と、戦っています……』
「………………は?」
『と、とにかく地上に出て下さい! 急いで!』
無線が切られた。
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