第八章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第八章
「それは。僕には」
「では僕が話すよ」
「ええ」
三神さんがここでこう申し出てくれたのでそれに頷くことにした。
「御願いします。僕にはわかりません」
「まず悪い遊びを止めて心を落ち着かせた」
「そうでしたね」
また話は戻った。
「それで」
「そう。それでそれが自然に動けたきっかけになったんだよ」
「どういうことですか?」
「心が荒んでいなくて落ち着いていた」
三神さんはそのことを述べられた。
「そのおかげでね。このいざという時に」
「動けたと」
「僕が動かしたのじゃないよ」
また不思議なことを言われた。
「僕がね」
「といいますと」
「そう、落ち着いて澄んだ心になっていたから」
首を傾げるばかりの僕に続けられた。
「仏様が動かしてくれたんだよ」
「仏様がですか」
「そうだよ。そうして僕に人を助けさせてくれたんだ」
「そうだったのですか」
「僕はそう考えていると」
ということであった。三神さん御自身の御言葉だと。
「けれどね。その時はまだそれがわからなくてね」
「はい」
「少し考えたんだ。それは何故だろうって」
「そうだったのですか」
「そしてもっと考えて」
考えをさらに深くさせられたのだという。
「考えて。それで出した結論は」
「それは一体」
「もっと人の為にしよう」
それであったらしい。
「同じようなことを続けていれば答えは出るかも知れない」
「続けていればですか」
「その時は漠然とこう考えたんだよ」
また述べられる三神さんだった。
「その時はね」
「ただ続けていればですか」
「うん。思えばその時はその時でよかったんだ」
三神さん御自身のことを振り返られつつ僕に対して述べるのだった。
「その時はね」
「ただ人の為にですか」
「まず己の生き方をあらため」
「はい」
まずはそこからなのだった。
「そして己を律していき」
「それから人の為にですか」
「思えばね。全て御仏の御導きだったんだよ」
ここでまた暖かい目になられて述べられたのである。
「全てね」
「御導きですか」
「癌になってあと半年と言われて」
「ええ」
「そして生活をあらためて」
実際に僕にもその時のことを再び話してくれた。
「そしてそれが身についてからやっと人の為だったんだよ」
「それでやっとですか」
「心がそれなりになっていなければ人はたすけられないんだよ」
「心がですか」
「無残な心の人には人はたすけられない」
これは僕にもわかる。どうして人の情がわからぬ者、その痛みや悲しみがわからぬ者に人がたすけられようが。三神さんの仰っていることはここではよくわかった。
「絶対にね」
「そうですね。全くです」
「以前の僕は無残な心
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ