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たすけ
第八章
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だった」
「以前はですか」
「本当にね。酒に博打に女に喧嘩に」
 またこのことをざっと述べられた。
「明け暮れていて家族に迷惑をかけて」
「そうした生き方をしていればですか」
「そう。荒んだ生活をしていていれば心も荒んでくる」
「そうですね」
 この言葉も僕にもわかった。生活はそのまま心になるということも。
「では。まずは生活を静かなものにされ」
「落ち着いた生活にしてね」
「それで心を入れ替えられてからだったのですね」
「そういうことだったんだ。それができてやっと」
「人をたすけることができた」
「それまでは考えもしなかった。いや」
 言葉を変えられてきた。ここでまた。
「動くこともなかった。無意識のうちにね」
「その時みたいに」
「そう。そして気付いたんだよ」
 三神さんの言葉がここでまた澄んだものになられた。何故か話を進めるごとにその澄み具合がより清らかなものになっていっている気がした。
「人の為に動こうって」
「あと三ヶ月を切ってそこでですね」
「何処までできるかはわからなかったよ」
 その時のことを述べられるが僕にはどうしても緊迫した感じがしなかったのはやはり今目の前にその三神さん御自身がおられるからだとう。
「何処までね」
「ですがそれでもだったのですね」
「そんなことは構わなかったよ」
 はっきりと仰った。
「その時はね。考えもしなかった」
「それよりも人の為にですね」
「そう。人の為に」
 そういうことだった。

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