暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
嘆きの歌
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残り時間は、はっきりとは分からない。しかし、僅かなのは抗いようもない事実だった。

「………リータ…ねーちゃん」

胸に満ちる思いの全てを言葉にするには、残された時間はあまりにも無情すぎた。

傷付いた、空色の髪を持つアバターを左腕で思い切り抱き締め、レンはありったけの感情を込めて囁きかけた。

「ありがとう」

ありがとう。

僕に感情を思い出させてくれてありがとう。

ありがとう。

僕の閉じた世界を広げてくれてありがとう。

ありがとう。

僕を救ってくれて、ありがとう。

右手をゆっくり上げ、握り締められていた短刀《小太刀》の切っ先を腕の中の女性に向ける。鋭く尖った剣先が、リータの胸の中央、クリティカル・ポイントの一つである心臓の真上に触れる。

「さよなら」

言葉と同時、腕が振り下ろされた。

これまで幾多の命を奪ってきたその刀身は、あっさりとリータの胸部装甲を貫き、残り僅かなHPをまとめて消し飛ばした。

…………さよなら、レン君。

そんな声が、ささやかな微風となって意識に流れ、消えた。

リータという一人の女性のアバターは、甲高い破砕音とともに千の細片となって爆散した。華奢な体は無数のポリゴンの欠片となり、空に舞い上がっていく。それらは夜闇の大気と混ざり合い、そして――――



消えた。
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