第十章
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多くの人を助けたな」
「私はただそこにいただけで」
「そう、そこにいた」
三神さんのこの言葉を指摘するのだった。
「そしてたすけをした。それこそが大事なのだ」
「そうなのですか」
「そなたのその中だが」
ここで男は話を変えてきた。
「既に病魔に蝕まれておる」
「はい」94
この言葉にも落ち着いて頷かれたという。
「それはもう」
「わかっているな」
「そのつもりです」
取り乱すことなく男に述べられた三神さんだった。
「それはもう」
「あと一週間もない」
「そうですね」
「怖くはないのか?」
男は不意に三神さんに対して尋ねられた。
「そのことは」
「確かに気掛かりではあります」
三神さんは男の問いに対してまずはこう述べられた。
「それは。実に」
「しかし。いいのか」
「はい。生きるのもまた運命、死ぬのもまた運命」
三神さんは述べられた。
「ですから。あとどれだけ命が少なかろうとも」
「よいと申すのだな」
「今はそう考えています」
三神さんの静かな御言葉は続いた。
「何故か。今はそのように」
「そうか。わかった」
男は三神さんのそうした御言葉を聞いて厳かに頷いた。
「そなたのその心はな。それよりも人だすけだな」
「この命ある限り」
またしても強い言葉であった。
「それをさせて頂きます」
「あいわかった」
ここで男は強い言葉と共に頷いたのだという。
「そなたの心はな。完全にな」
「左様ですか」
「ならばしてみよ」
そしてまた言った。
「その命ある限りな」
「は、はい」
「そなたはまだ生きる」
「まだといいますと」
「寿命は確かにあの時で半年しかなかった」
ここで話は遡るのだった。
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