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色と酒
第一章
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「昨日は男だったのかい」
「違うね、それは」
 その問いはすぐに否定する。だが男を相手にしたのは事実であるからこれはかなり矛盾する言葉だった。友人はそれに突っ込まざるを得なかった。
「しかし君は今」
「男もだよ」
 笑って返してきた言葉はこれであった。
「わかるかい?僕は一日一人じゃ気が済まないんだ」
「何人もかい」
「昨日は朝に一人、夕方に二人」
 こう語りはじめた。
「そして今日の朝までで一人とゆっくりと。そんなところさ」
「凄いね、よく身体が持つものだ」
「人間好きなものはどれだけでもやれるものさ」
 笑っての言葉であった。
「それに僕は幸い身体は頑健だ」
「それに任せてなんだね」
「そういうことさ。実は今日も」
「今日はどれだけ遊んだんだい?」
 友人が飲んでいるのはビールだった。イギリス風の洒落たバーの中で楽しく飲んでいるがどうにもこの大村がやけに目立っている。少し見ただけではとびきりの男前だからそれも当然であるが。それでもかなり目立っていたのであった。
「今日は二人だね」
「今まででかい」
「女だけだったよ」
 少し寂しげに語る。
「全く。男が欲しいというのに」
「じゃあ探せばいいさ」
 友人はビールを飲みながら大村に述べた。
「探せばきっと見つかるだろう」
「そうであって欲しいよ」
 大村はわざと溜息を出して言うのであった。
「全く。どうしたものやら」
「そんな日も多いんだろう?」
 友人はその溜息にあえて乗った。そうして彼にこう問うたのであった。

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