第二章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第二章
「それじゃあ。はい」
「じゃあね。十数えたらでいいよね」
「いいわよ。じゃあはじめまよう」
相子から目隠しのタオルを受け取って目隠し鬼をはじめる。二人にとっての小さな秋はこのもずの声だった。山の遠く向こうから聞こえるそのもずの声であった。
「ねえあなた」
「どうしたんだい?」
「寒くなったわね」
山森夕実は夫の秀人に対してこう言ってきた。二人は今自分達の家の中で静かな休日を楽しんでいる。その中でふと夫に対して言ってきたのである。
「もうかなり」
「そうだよな。秋だからな」
「早いものね。ほら」
ここでガラスを指差す夕実だった。
「もうガラスが」
「曇ってるんだな」
「寒いからよね」
「そうだよな」
妻の言葉に頷きながらその窓を見る秀人だった。
「もうな」
「それにな」
ここで秀人が夕実に言った。
「風が吹き込んでないか?」
「そういえば寒いと思ったら」
夫の言葉でこのことにも気付く夕実だった。
「何処からかしら」
「そこからじゃないのか?」
その窓ガラスを指差す秀人だった。
「そこから。違うのか?」
「そこからなの?」
「古い家だからなあ」
秀人は首を捻って言った。
「もう建てられてからな」
「どれだけだったかしら」
「四十年だろ、確か」
少し考えてから妻に言った。
「だからもう」
「隙間風も当然かしら」
「そうだね。けれど」
ここで彼はふと言葉を変えた。
「隙間風じゃないさ、今のは」
「隙間風じゃないって」
「そうだよ。これはね」
「それじゃあ何かしら」
夕実は秀人の言葉にふと首を捻る。今度は彼女が首を捻っていた。
「それだと」
「秋だよ」
「秋?」
「そう、秋さ」
微笑んで妻に告げた。
「秋だよ。そう考えればいいじゃないか」
「そうなるのかしら」
「だから。そう考えるんだよ」
にこりと笑って夕実に話す。
「そうね。それでどうかな」
「そうね」
夫の言葉をここまで聞いてまた考える顔になった。
「そんなものかしら」
「それじゃあさ」
秀人はここで何かを出してきた。
「これはどうかな」
「これって?」
「さあ、一杯」
出してきたのはミルクだった。一杯のホットミルクだ。暖かい湯気を出して秀人の両手にある。それが夕実の前にそっと差し出されたのだ。
「どうぞ」
「ミルクね」
「寒くなったからね」
この言葉と共に出されたのだった。
「だからさ。一杯ね」
「そう。寒くなったからね」
「秋だよ」
彼はここでまた秋を口に出した。
「寒くなるのは当然だよ」
「そうね。けれど」
夕実はミルクを見ながらすっと微笑んでまた述べた。
「辛い寒さじゃないわね」
「秋だからね」
秀人の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ