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戦争を知る世代
第九話 緊急学徒動員策
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気を引き締めなくては。



コンコンコン


扉をノックする音が聞こえる。
後ろを振り向きながらノックに答える。


「どうぞ。」

「失礼します。」
扉を開けて入ってきたのは、奈良シカクであった。
頭が切れ、若くもリーダーたる覇気を持つ青年だ。
普通の服ではなく、破いたような服を着るのはよくわからんが・・・。


「天戸衆と接敵したものから話は聞けたかの?」
側にあった椅子に座りながら質問する。



「はい、聞けました。結論から言いますと・・視覚を奪う・・そのような感じだと話しておりました。」


「視覚を奪う?」
聞いたことがないな、幻術の類いだろうか?


「ただ、これ以上のことが分かりませんでした。彼はどうしてそうなったのか、よく覚えていないようでして。」
シカクは申し訳なさそうに言う。


「情報部の山中いのいちの術で記憶を探りましたが 、記憶はその部分だけが不鮮明で分かりませんでした。いのいちは恐らく、とても強いショックを受けたのだろうといっておりましたが・・・。」


「いや、これだけでも少し進めたのぉ。なかなか、情報が入らん奴等じゃが、少しずつ少しずつ包囲を狭めていけば・・・掴めるはず・・・続けて頼む。」



少し座っているのが疲れたか、そう思い、椅子から立ち上がる。

ん?そういえば・・・
「接敵した本人の小夜啼トバリの様子はどうだ?」



シカクもあ、そうだというような顔をして答える。
二人してひどいな・・・
「重症ではありましたが、回復の傾向を見せています。見つけたはたけ隊長の処置がよかったようで。」



「そうか、ならよかったの。復帰したら後方に回すか・・・」
戦争を体験したものの気持ちはよくわかる。
特にあのようなひどい撤退戦は、心を病ませる。




「そうですね。その方がいいかもしれません。・・・例えば、アカデミーたちの小隊長に、とかですか。」
ふむ、と整えているあごひげを触りながら答えた。



それにつられて私もあごひげを触ってしまう。
「うむ、その考えは良いかもしれんな。」




ふと、窓のほうに目をやると向かいの屋根を白い何かが走り抜けた。

ん?なんだ・・・?
白い・・・狐か?


・・白い、狐・・・ふしみイナリか、
そうか、彼も戦争に出ることになる。





彼の身にまだ何も起きていないようだが、いつか起こるのだろうか。



あの子が、


あの子が“憑代様”に成るのだろうか。







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