第九話 緊急学徒動員策
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るで大怪我をしているようだ。しかも、杖をついている。その目はタカのように鋭く、話している相手を睨んでいる。
「しかし、ダンゾウ、未来の木の葉を支える子供たちを戦場に出すなど、馬鹿げておる。」
悔しくて、声が少し掠れ気味になる。
「馬鹿げているのはお前だ。未来も何も、今を生き延びねば里に将来はないのだ。」
カンっという音を立てて、杖の先を床に叩きつけた。
「お前は本当に今の里の状況がわかっているのか?他里に比べ、木の葉は戦力が大きく削がれている。」
低い声で立て続けに痛いところをついてくる。
昔からそうだった。こやつの言うことは正しいのだ。ただ、それが道徳的に、心情的に理解されない。
わかってはいるのだ・・・・もはや、こうするしかないことも。
だから、大名様を交えた会議でもダンゾウの意見を抑える事が出来なかった。
ただ、気持ちが許さぬ、大人たちが始めた戦争に無力の子供まで巻き込んでもよいのかと。
しかし・・・
木の葉の戦力は今や、300。小隊にして75個小隊。
岩の戦力は500。小隊にして125個小隊。
現実は火を見るよりも明らかだ。
敵は強かで、姑息だった。戦争が始まる前にこちらの戦力を削ぎ落とし、主力派の能力を把握させない。こちらは直接の戦闘でも、情報戦でも遅れを取っている。
「もういいな?お前は火影だ。覚悟を決めろ。でなければ、火影を後に譲れ。」
厳しい口調で問い詰めてくる。
一瞬、ダンゾウの目を見る。
しかし、すぐに逸らし窓の外を見る。
動揺しているのを隠す為だ。
街が見える。
栄え、人の活気が絶えないこの木の葉も、里を襲われたあの時はとても、静かだった。
倒壊した建物、子供のぬいぐるみが落ちている道、怪我をした人、亡くなっている人、悲しいものがあの時里を包んでいた。
初代様、二代目様のお二方から託されたこの木の葉という大きな家族。
何としてでも守らねばならぬ。
そして、後世に繋いでいかなくてはならぬ。
あのような目にもう二度と遭わせてはならない。
まだ、納得は出来ぬ。
しかし、前に進もう。
それが今、わしに出来ることだ。
もう一度、ダンゾウの方に目をやり、今度は逸らすことなくしっかりとした口調で言う。
「わしは火影として責任を持つ。里を、民を守らねばならぬ。」
「・・・そうか、ならしっかりとしろ。」
ダンゾウは目を逸らしながら小さな声で言った。
そのままゆっくりと背を向け、コッコッコッと杖をつきながら執務室を出ていった。
それを見送り、また窓の外を見る。
ふぅ、と溜め息をつく。
ただ、何も解決したわけではない。
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