第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百八 〜波乱の旅立ち〜
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ではない」
「でも、歳三や曹操、馬騰みたいな強さがあれば」
「いや、何も己ばかりを高める事が強さではない。強き者を如何に使いこなすか、それもまた重要だ」
「強き者を、使いこなす……」
「そうだ。雪蓮が突出して強いのは、睡蓮(孫堅)譲りであろう。だが、お前には雪蓮にない器量がある」
「…………」
「人を惹きつける力、国をまとめ上げる力だ。雪蓮は戦って領土を広げるうちは良い、だがそれとて永遠に続く訳ではなかろう」
「私には、姉様にはないそれがあるというの?」
「そう思わぬのなら、早めに自覚する事だな。恐らく、雪蓮も同じ評価をしている筈だ」
漸く、蓮華の表情が和らいだ。
「やっぱり、人の上に立つ人間は違うわね。私の事、そこまで見抜いているだなんて」
「特段、私は人物鑑定眼が優れているとは思わぬがな」
「そうかしら? でも、あなたに従っている者はどう? 挙って優秀な人材ばかりじゃない」
「私の志に賛同してくれた者らが、偶さか今の顔触れだった。そう申しても信じられぬか?」
「そうだとしたら、あなたの方こそ余程私なんかよりも人を惹きつけるものがあるわね。つくづく、あなたとは戦いたくないわ」
戦いのない日々は、いずれ訪れよう。
だが、蓮華なら兎も角私はそれに相応しいのであろうか。
想像もつかぬ事だが……さて。
「ご主人様!」
「愛紗。如何致した?」
愛紗の顔が強張っているが、何か起きたか。
「はっ。行く手に、正体不明の船が」
「ほう。数は?」
「それが、たった一隻との事です」
「それで、弓矢を向けてくる気配は?」
「今のところは。ですがご主人様、一旦上陸しては如何でしょう?」
「様子を見ろと申すか?」
「御意。何か企みを持った者どもという事もあり得ます」
水上戦ともなれば、今の我らではお手上げ同然だ。
修羅場は多数くぐり抜けたとは申せ、私が経験した水上戦と言えば宮古湾のみ。
それも、実際に戦ったのは海軍であり私は同乗していたに過ぎぬ。
心得があるとすれば蓮華と、雪蓮が残した僅かな兵のみ。
「ひとまず、全船停止だ。周囲の警戒も怠るな」
「御意!」
俄に、辺りに緊張が走る。
何事もなければそれで良いのだが、さて。
全軍が固唾を呑んで見守る中、その船はゆっくりと此方へと近づいていた。
蓮華と愛紗の他、恋と紫苑を私の傍に呼んである。
他の者らも向かってこようとしたが、万が一を考えて留め置いた。
「たった一隻で、何かやろうってのなら随分無謀な事ですが」
「でも、愛紗ちゃん。少し、静か過ぎる気がしないか?」
「……ん。何か、変」
甲板に人の姿はないが、流れに逆らって進んでいるという事は漕ぎ手は居るはずだ。
黄河の
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