暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百八 〜波乱の旅立ち〜
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手でもあった。
 麗羽は一族の束ねに些か手間取っているようで、当人は兎も角他の者どもが良き顔をせぬ可能性がある。
 華琳の場合はそのような懸念はないが、これだけの軍が通過する事を許すかどうかだ。
 打てる手は全て打つ、それも考えぬではなかったが、

「船で一度に移動した方が、結果として糧秣の消費も抑えられます」
「それに、兵や馬の疲労も違うわね」

 禀と詠の意見を採る事とした。
 それだけの船を用意するのも難題ではあるのだが、それは張世平と蘇双が解決した。

「他ならぬ土方様の為ですからな、手前共が商いで使う船をかき集めました。どうぞお役立てを」

 その言葉通り大小様々な船が混じり合ってはいるが、戦闘を行うつもりがなければ問題はないと判断した。
 残る気がかりは、青州情勢。
 刺史や郡太守が不在で、黄巾党の残党が集結しているのが現状である。
 疾風が不在の為、調査と対策は風に一任した。
 霞と鈴々を伴い、風は先遣隊として一足先に向かっているところだ。

「歳三。湖賊の対策は大丈夫なの?」

 水上に出てから、蓮華が話しかけてきた。

「長江程は湖賊がおらぬと聞いている。華琳や麗羽がかなり厳しく取り締まりと討伐を行っているらしいな」」
「そう、それならいいのだけど……」

 だが、蓮華は未だ心配顔である。

「不安か?」
「ええ。歳三の軍は確かに強いわ、でも水戦の経験はあまりなさそうね」
「わかるか?」
「これでも、孫家の人間よ? 馬には乗れなくても、船なら自由自在な者ばかり見てきたわ」
「うむ、やはりか」

 いずれ解決せねばならぬ課題としては、確かに気になっていた事ではある。

「尤も、これは歳三の軍だけじゃないわ。北方の兵は殆どがそうみたいね」
「確かにな。蓮華は、水戦の心得があるのか?」
「一応はね。でも、もし水戦の話を聞きたいのなら私よりも適任者がいるわ」
「思春か」
「そうよ。でも、よくわかったわね?」
「彼の者も、嘗ては湖賊であったと小耳に挟んだ故な」

 書物の中の知識ではあるが、誤りではなさそうだ。

 そして、雪蓮らもそれを否定するような真似はせぬ。
「全く、恐ろしいわね歳三は。何もかもお見通しじゃない」
「そんな事もない。だが、知ろうとする姿勢は常に持たねばならぬな」
「……そうね。私も、もっともっと学ばないと」

 苦笑する蓮華。

「だが、雪蓮を目標にするのは止した方がいいな」
「何故? 姉様は強いわ、個人の武だけじゃなく将としても」

 ふむ、不満が顔に出ているな。

「それは否定せぬが、そもそも雪蓮とお前では持ち味が違う」
「……つまり、私は弱いって事?」
「そうではない。個の強さばかりが将として求められる要素
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