暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百八 〜波乱の旅立ち〜
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どろの秋華。

「それならば。恋」
「……ん。セキト、賢いからわかってる」

 恋が頷いたのを見て、セキトが秋華にじゃれついた。

「あ、あははは。か、可愛いっ!」

 あまりの変貌ぶりに、雅や白蓮が固まっている。
 普段は冷静沈着でも、犬を見ると見境がなくなってしまうようだな。

「この子、アンタのかい?」
「……(フルフル)」

 恋が頭を振る。

「……セキトは、恋の家族」
「家族かぁ。他にも犬いるのかい?」
「……(コクッ)」
「本当かい! なあ、歳旦那。やっぱあたし一緒に行く! いや行かせてくれ!」

 恋を除く一同、苦笑するより他にない。
 ともあれ、これで雅の懸念もなくなった事だけは確かだがな。

「ご主人様。準備完了です」
「うむ。朱里、では出立の合図を」
「御意です」

 これより、徐州に落ち着くまでの差配は朱里が主体となる。
 策を立てた当人という事もあるが、何より徐州情勢に最も詳しいのも事実。
 指名した当初こそいつもの慌てぶりであったが、それも一瞬の事。
 一度覚悟を決めてしまえば、流石は諸葛亮よという働きぶりである。
 それに触発されたのかどうかはわからぬが、風や雛里も精力的に任務をこなしていた。
 そして、月も張り切って私の仕事を手伝っている。
 もうそこまで頑張る必要のない立場なのだが、

「お父様のお手伝いが出来る事は、私の喜びなんです。だから、やらせて下さい」

 ……と、なかなかに頑固である。
 詠も進んで……と申すより、私と月の側用人のような格好である。
 本人曰く、

「僕は肝心な場所でドジを踏む癖があるからね。だから、軍師としてじゃなく歳三と月の手助けに専念させて貰うわ」

 との事で、優秀なだけに仕事の捗りようが尋常ではなくなっていた。
 私自身はかなり負担が軽減されたのだが、然りとて怠ける訳にもいかぬ。
 人の上に立つ難しさを、改めて実感しているところだ。
 ……人材不足に悩む諸侯からすれば、贅沢の極みとも言えようが。

「では白蓮、雅。行って参る」
「ああ、気をつけてな」
「はい、またお目にかかれるのを楽しみにしております」

 二人に頷き返すと、私は馬に跨がった。



 洛陽から徐州への道のりは、幾通りかの選択肢がある。
 一つはひたすら真っ直ぐに進み、エン州を通る。
 距離は最も短く、かつ平坦である。
 今ひとつは一旦冀州に入り、北より徐州へと至る道。
 更に、黄河を下って青州を経る道。
 いずれを選ぶかは、皆の間でも意見が分かれた。
 エン州経由の場合は華琳の、冀州経由の場合は麗羽の許しを得る必要がある。
 いずれとも縁がある勢力ではあるが、先だっての合戦で敵対関係になった相
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