第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百八 〜波乱の旅立ち〜
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
どろの秋華。
「それならば。恋」
「……ん。セキト、賢いからわかってる」
恋が頷いたのを見て、セキトが秋華にじゃれついた。
「あ、あははは。か、可愛いっ!」
あまりの変貌ぶりに、雅や白蓮が固まっている。
普段は冷静沈着でも、犬を見ると見境がなくなってしまうようだな。
「この子、アンタのかい?」
「……(フルフル)」
恋が頭を振る。
「……セキトは、恋の家族」
「家族かぁ。他にも犬いるのかい?」
「……(コクッ)」
「本当かい! なあ、歳旦那。やっぱあたし一緒に行く! いや行かせてくれ!」
恋を除く一同、苦笑するより他にない。
ともあれ、これで雅の懸念もなくなった事だけは確かだがな。
「ご主人様。準備完了です」
「うむ。朱里、では出立の合図を」
「御意です」
これより、徐州に落ち着くまでの差配は朱里が主体となる。
策を立てた当人という事もあるが、何より徐州情勢に最も詳しいのも事実。
指名した当初こそいつもの慌てぶりであったが、それも一瞬の事。
一度覚悟を決めてしまえば、流石は諸葛亮よという働きぶりである。
それに触発されたのかどうかはわからぬが、風や雛里も精力的に任務をこなしていた。
そして、月も張り切って私の仕事を手伝っている。
もうそこまで頑張る必要のない立場なのだが、
「お父様のお手伝いが出来る事は、私の喜びなんです。だから、やらせて下さい」
……と、なかなかに頑固である。
詠も進んで……と申すより、私と月の側用人のような格好である。
本人曰く、
「僕は肝心な場所でドジを踏む癖があるからね。だから、軍師としてじゃなく歳三と月の手助けに専念させて貰うわ」
との事で、優秀なだけに仕事の捗りようが尋常ではなくなっていた。
私自身はかなり負担が軽減されたのだが、然りとて怠ける訳にもいかぬ。
人の上に立つ難しさを、改めて実感しているところだ。
……人材不足に悩む諸侯からすれば、贅沢の極みとも言えようが。
「では白蓮、雅。行って参る」
「ああ、気をつけてな」
「はい、またお目にかかれるのを楽しみにしております」
二人に頷き返すと、私は馬に跨がった。
洛陽から徐州への道のりは、幾通りかの選択肢がある。
一つはひたすら真っ直ぐに進み、エン州を通る。
距離は最も短く、かつ平坦である。
今ひとつは一旦冀州に入り、北より徐州へと至る道。
更に、黄河を下って青州を経る道。
いずれを選ぶかは、皆の間でも意見が分かれた。
エン州経由の場合は華琳の、冀州経由の場合は麗羽の許しを得る必要がある。
いずれとも縁がある勢力ではあるが、先だっての合戦で敵対関係になった相
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ