第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百八 〜波乱の旅立ち〜
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一族が専横を極め、並み居る者らは悉くそれに媚びへつらっているらしい。
そんな中でも雅は筋を通し、劉表以外の命には従わぬ事を明らかにしていた。
当然蔡瑁らからは疎んじられ、命すら狙われかねぬ状況にまで追い込まれていたとの事。
見かねた劉表は病床で筆を執り、雅に洛陽行きを命じた。
このまま蔡瑁にむざむざ殺されるよりは、陛下のお力になるようにと。
決して武に優れている訳でもなく、明命や疾風(徐晃)らのように身軽な訳でもない。
そんな雅だが、その明晰な頭脳を活かして無事に襄陽を抜け出すのに成功。
そして、洛陽に辿り着けたのは幸運な出会いがあったから。
「秋華、本当に行っちゃうの?」
「ああ。あたしは学がない。雅に迷惑はかけらんないしさ」
屈託なく笑う少女は、いつぞや鈴々を散々に翻弄した王平こと秋華。
たまたま荊州を流浪していた最中、襄陽よりの追っ手から雅を見つけてこれに加勢。
持ち前の機転で追っ手を巻き、この洛陽まで警護を買って出た。
その甲斐あり、こうして五体満足である。
二人は肝胆相照らす仲となったようで、真名で呼び合っている。
「でも、この先はどうするの? 当てもないのよね?」
「ま、どうにかなるさ。歳旦那から、こうして褒美も貰えたしさ」
革袋を手にしながら、からからと笑う秋華。
二人の真名を預かるつもりはなかったのだが、雅から、
「陛下をお守りいただいたからこそ、私の行動も劉表様の意思も無駄になりませんでした。そのお礼として、是非」
と乞われた。
そして、その雅が信頼するならばと秋華からも申し出があった。
当人達が望む以上、私に拒む理由などない。
無論、私の事も好きに呼ぶ事を許した。
雅からは『歳三さん』、秋華は『歳旦那』と呼ばれる事となった。
「その事だが秋華。我らと共に参らぬか?」
「え?」
「行く当てもないのであれば、我らと共に旅するのも一案かと思うが。何も、将や兵として働けとは申さぬ」
「でも、それ歳旦那や他の皆に迷惑じゃん」
「何、一人増えたところでどうという事はない。それに、我らと共という事であれば雅も安心出来よう」
「はい。歳三さまと一緒ならば、これより心強い事はありません。秋華、是非そうなさいな」
「でもなぁ……」
ふむ、気乗りせぬか。
自由奔放が身上とも言うべき者だ、束縛するつもりはないのだが。
「ワン、ワン!」
と、セキトが駆け寄ってきた。
途端に、秋華が身を強張らせた。
「セキト、向こうに行っておれ」
「ああああ、ちょ、ちょっとまった歳旦那!」
「どうした?」
「あ、あのさ……。ちょ、ちょっとでいいから撫でていいかい?」
上目遣いになり、しどろも
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