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嘆き
第三章
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人で充分か」
「拙者一人おればそれでことはなったもの」
 胸を張って言い切ってみせていた。
「御安心下さいませ」
「ほほう、自信があるか」
「自信がなければ受けはしませぬ」
 ここでも言い切る。彼はあくまで強気であった。
「そういうことでござる」
「わかった。ではそなた一人に任せる」
「はい」
 話は完全に決まってしまった。これで。
「無事務めを果たして参れ。よいな」
「わかり申した。さすれば父上」
「何じゃ」
 如何にもといった不機嫌な顔を我が子に向けて応えていた。将軍が許しても彼は許さない、それがはっきりとわかる表情であった。
「今より行って参ります」
「すぐに発つか」
「魔はすぐに消すべきもの」
 真剣な面持ちでの言葉であった。
「さすれば是非」
「わかった。では行って参れ」
「はっ」
「しかしじゃ」
 ここで但馬はこれまでの不機嫌な顔を変えていた。真顔になりその顔で以って我が子に述べてきていた。子もまた真顔でそれを受けていた。
「わかっておろうな」
「無論」
 静かに言葉が交差する。
「最初から承知しております故」
「ならばよい」
 但馬は我が子のその言葉を聞いて安心したように頷いた。しかし目を閉じただけでその表情から読み取れるものはなかった。

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