第十一章 追憶の二重奏
第四話 初めての―――
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したわ」
息を飲む音が一つ、響く。
「勘違いしてもらっては困るけど、別にシロウが新しい女に手を出したことが問題じゃないの」
「ん? なら何が問題なんだい?」
ベッド脇に置かれた椅子に腰を下ろしたロングビルが、目尻に浮かんだ涙を指先で拭いながら問う。
「ミス・カトレアに手を出したことが問題なのよ」
「だから、それの何処が問題なんだい?」
ため息混じりに再度問いかけてくるロングビルを鼻で笑うと、キュルケは首を左右に振った。
「分かってない。分かってないわ」
「……分かってないって?」
「―――あたしの経験からして、あの人みたいなタイプはね―――物凄く厄介なのよ」
伏せた顔から苦い声が漏れる。
「厄介って……ミス・カトレアはとても穏やかで優しい人ですよ。学院生だけでなくて、わたしたちメイドや料理人にも人気がありますし」
所在無さ気に部屋の中をウロウロと動き回っていた足を止め、シエスタが戸惑った声を上げた。
「そういう事じゃないのよ。あたしが厄介って言ったのはね。そう言う意味じゃないの。あたしが言いたいのは、彼女が余りにも魅力的ってとこよ」
「え? それの何処がいけないんですか?」
分からずシエスタの眉が困ったように眉を八の字に曲がる。
「いけないって訳じゃないんだけど……シロウと関係がなかったらね」
「シエスタ。ちょっと考えてみなさい」
先程から腕を組み壁に背を預けた姿でニヤニヤとした笑みを浮かべ部屋の中を見ていたジェシカが、困り果てた様子のシエスタに声を掛けた。
「めちゃくちゃ美人で可愛い妙齢の女性でスタイル抜群。性格は穏やかおっとり、話題豊富でコミュニケーション力抜群。しかも貴族さまで一家の女主人」
あは〜、と笑いながら組んでいた両手を開き、ジェシカは段々と顔色が悪くなっていくシエスタに告げる。
「そんな男の理想の一つとも言える人がシロウと急接近。さて? それを考えて、どう?」
「とんでもなく厄介じゃないですかッ!!?」
ぎゃーっ! と突然頭を抱えて叫び出したシエスタを指差し「あはは」と笑うジェシカは、目尻に浮かんだ涙を指先で拭いながら硬い表情を浮かべるキュルケに視線を向けた。
「つまり、そういうことでしょ?」
「……そういうこと。ミス・カトレアは魅力的な人よ。あなたが言った通り、男の理想の一つと言っていいわね。特に自分から積極的に話しかけているわけじゃないのに、ああいうタイプの人には自然と人が集まるのよ。女も男も、ね。で、ああいうタイプで最も厄介なのが、男を変えるって点よ」
「男を変える?」
疑問、と言うよりも、意味が分からず呆けたような声がシエスタの口から溢れた。
「あたしの経験
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