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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第四話 初めての―――
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る衰えは見えたけど、それでもルイズの母親は美人だったよ。だけどね、聞いてくれ。ルイズの母親は『ちょっと稽古でもつけてあげましょう』と言いながら、いきなりスクウェアスペルの『カッター・トルネード』なんてぶっぱなしだんだぞっ!? ほんと有り得ないよっ!? 鍛えられる前に軽く死んでしまうってっ!?」
「しかも『腕の一本や二本なら何とか、まあ、それなりに、多分大丈夫だと思いますので、遠慮なくぶつかっていきなさい』なんて言うし。ぶつかったら腕どころか身体全部がスライスされてしまうって。ほんと有り得ないよね。あれは『女王様』ではなくてもっと別の……そう、『処刑人』だよ」

 掠れた声で淡々と呟かれる内容に、レイナールたちは自分たちの顔色も段々と悪くなっていく。

「隊長の訓練がなければ死んでいたね」
「うんうん。あの稽古とは名ばかりの処刑を体験して初めて、今まで隊長から受けた訓練に対して感謝を感じたよ」

 腕を組み深く頷き合うギーシュとマリコルヌ。そんな二人の様子にレイナールとギムリの顔が思わず引き攣ってしまう。

「……そこまでか」
「そういえば隊長も随分と疲れているように見えるけど、もしかして隊長もその稽古を受けたんですか?」

 レイナールがふと頭に過ぎった事を口にした。
 今朝……と言うか三日前。より正確に言えばヴァリエール家から学院に戻ってきてから今日まで、士郎の様子は明らかに変であった。別に突然奇声を上げたり裸踊りを始める等といった変ではなく、何時も何処か飄々とした様子を見せる士郎が一目見て分かるほど疲れているのだ。

 だからギーシュたちの話を聞き、それが理由か? と軽い気持ちで聞いてみたのだが……。
 それがまさかあんな事になるとは……この時には誰も想像もすることは出来なかった……。

「まあ、それなりに、な」
「やっぱり隊長もキツかったんですか?」

 苦笑いと言うよりも引きつった笑みを浮かべた士郎に、レイナールは笑み混じりの問いを返す。

「……そんなこと考えている暇などなかったな」
「隊長でもそうなる程の稽古か……行かなくて正解だったな」

 顔を俯かせる士郎の様子に、腕を組んだギムリが安堵の息を漏らす。その目には同情の色が宿っていた。今だに手も足も出すことが出来ない隊長が、これ程までに疲れ果てるとは、一体どれほどのモノだったのだと戦々恐々のギムリの背筋に寒気が走る。そして同じくそれを受けて生き残った自分たちの仲間に対し、同情と尊敬の視線を向けると、予想外の反応を返された。

「「……はっ!」」

 そこには肩を竦ませ哀れみに沈んだ視線を向けるギーシュとマリコルヌの姿が。

「ん? ど、どうしたんだよ」
「そんな哀れんだ目で見られる覚えはないんだが?」

 何も知らない者に対
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