第十一章 追憶の二重奏
第四話 初めての―――
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全く理解出来ない己の心の内を必死に吐露するキュルケだが、それを聞くロングビルは話が進むに連れある考えが次第に明確になっていくのを実感。それと共にある種の虚脱感に襲われ相槌も加速度的に弱く適当になっていく。
「ほんと……わけが分からないわ」
キュルケが結論をベッドに当たって押しつぶされた声で口にすると、
「―――理由が分かった」
何気ない様子でロングビルは自身の中で生まれたものに確信を持った。
「えっ?!」
「そういう事」
驚きのあまり反射的に枕を掴んでいた両手を離し、ベッドに手をつき一気に身体を持ち上げたキュルケは、ロングビルの背中に顔を向ける。キュルケの視線の先には、ロングビルの背中しか映らない。ロングビルは振り向いていなかった。キュルケの視界の中、ロングビルの後頭部が上下に揺れる。
「ちょ、そういう事ってどういう事よっ!!?」
「あ〜あ……何だい、やっぱりただの青春か」
キュルケの問いに答えず、キュルケはやる気の無さ気な声でぶつぶつと呟く。
そんな「青臭いガキにかまってる暇なんてねぇ」とでも言いそうな気配を漂わせるロングビルに詰め寄ろうと、キュルケは匍匐前進の姿でベッドの上を這って近づく。だが、その伸ばされた手がロングビルの身体に触れる直前に、ロングビルは椅子から立ち上がってしまう。
「青春って何よっ!?」
「何が『らしくない』だ、『乙女みたい』だ……十分らしくて、乙女じゃないかい」
椅子から立ち上がったロングビルは、溜め息をつきながら扉に向かって歩き出す。寝ていた身体を起こし、ベッドの上で女の子座りしたキュルケが、去っていくロングビルの背中に向けて声を大にして呼び止める。
「ちょっとっ! 何処行くのよっ!?」
「部屋に帰るんだよ。休んでいた分の仕事がまだ残ってるんでね」
立ち止まることなく、キュルケに背中を向けたままの姿で手を振る。
「帰る前に教えなさいよっ!? あたしがシロウじゃなきゃ駄目だって言うその『理由』ってやつをっ!!」
ベッドの上で吠えるように声を上げたキュルケに、部屋と廊下の堺で立ち止まるロングビル。
立ち止まったロングビルは、背中越しにキュルケに問いかける。
「あんたまだ分かんないのかい?」
「分からないから聞いてんでしょっ!」
不満を露わにした声に、ロングビルは肩越しにキュルケに振り向く。
「分からないって……あんたさっきから自分で何度も答えを言ってるじゃないか?」
「え?」
キュルケの眉が中央に寄る。
「あんたはシロウに『恋』してる。それが理由だろ」
「『恋』って……でも、それは……」
「ああ正確には『恋』じゃないか―――」
「え?」
否定のため横に振られそう
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