第十一章 追憶の二重奏
第四話 初めての―――
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キュルケとのやり取りで、腕だけでなく身体から力が抜けたのか、ロングビルは背もたれにつけていた身体をだらりと前に倒してしまう。数呼吸分おいて何とか気を取り直したのか、ゆっくりと身体を持ち上げると、先を促すように手を差し出す。
「ん、それで、あたしは顔がいいとか、強いとか、頭がいいとか、そういうのを見て『いいな』って思ったら直ぐに手を出してたんだけど」
「うん。最悪だねあんた」
「うるさいわね。いちいち口出ししないでよ」
苛立たし気に強く床を足で蹴りつける。
ロングビルの口が閉じるのを確認すると、気分を入れ替えるように軽く歩き、ロングビルから少し離れたベッドの端に腰を下ろした。
「そういう『いいな』って気持ちが、『好き』ってものだと思ってたのよ」
「……まあ、間違いじゃないとは思うけど」
ベッドの上に腰を下ろしたキュルケに視線を向けると、ロングビルはゆっくりと足を組み、胸の下に腕を組んだ。
「そう、ね。確かに間違いじゃない。でも、正解でもなかったのよね」
「……? どう言う事だい?」
あやふやな物言いに、ロングビルの眉が眉間に寄る。
「シロウが学院に来たばかりの頃なんだけど……あなたがまだ大人しくしてた頃ね」
「……随分と懐かしい話だね。で、その頃がどうしたんだい?」
昔を思い出すように天井の方に向けていた視線を元に戻す。
―――ロングビルがフーケであった事を知っているのは多くはない。士郎やオールド・オスマン以外では、キュルケ、ルイズ、そしてシエスタの三人がそうだ。バレたという訳ではなく、実はロングビルが自分から伝えたのだ。伝えたのは割と最近のことであった。勿論最初話した時かなり驚かれ色々な意味で危なかったが、そうなってしまった事情等を話したところ、二度としないという事で納得はしてくれたのだが……今はそのことは関係ない。
ロングビルの視線の先、ベッドの上に後ろ手に手を着いたキュルケがベッドの天蓋を仰ぐ。
「実は一回シロウに迫った事があるのよ」
「……それはまた、唐突な……あんたが興味を惹かれるような事あったかね?」
突然のカミングアウトに、ロングビルの声が一瞬動揺に震える。
「ほら、ギーシュと決闘したじゃない。あれよ。あれを見て、ね」
「……そう言えば確かにあったね。そんな事……ふ〜ん、つまりシロウがギーシュを軽くいなした姿を見て」
「そう、『いいな』って思ったのよ。だから何時も通り直ぐに手を出したの」
顔を下ろしたキュルケは、顔の前に上げた右手を見つめる。
何も乗っていない空の手のひらの上をじっと見つめ続けるキュルケに、ロングビルが先を促す。
「結果は?」
「……あっさり躱されたわ」
「だろうね」
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