暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第四話 初めての―――
[12/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ばそれ以上の男はいるでしょうね。そしてあたしはそれを落とす自信はある」

 その大きな胸を誇らしげに張るキュルケ。ふるるんっ、と揺れる胸を見つめていたロングビルは、肩を竦めて問いかける。

「なら、そうすればいいじゃないか?」
「だから、あんたがそれを言うの?」
だから(・・・)、言うんだよ」

 目を細め、睨みつけるような強い視線をキュルケに向ける。突き刺さるような強い視線を受けたキュルケだが、怯むことなく腕を組むと首を左右に一度強く振った。

「……無理ね」
「理由を聞いても?」

 静かに、しかし、ハッキリと否定の言葉を口にしたキュルケの姿に、ロングビルは背もたれに寄りかかるように背を逸らす。キュルケを見下ろす目に更に力を込め、ロングビルは強く問いかける。
 しかし、
 
「……さあ?」
「『さあっ?』って、どう言う事だい?」

 問いに対するキュルケの答えは同じく疑問であった。

「そんなの、あたしが聞きたいくらいよ」
「揶揄ってるのかい?」

 要領を得ない答えに、ロングビルはムッ、と顔を顰める。
 そんなロングビルから顔を背けたキュルケは、顔の前に上げた手を左右にふるふると振った。

「別にそうじゃないわよ。だた……本当に分からないのよ……そういえば……ねぇ、あなたってあたしの二つ名知ってる?」

 顔を前に戻し、ロングビルに視線を合わせたキュルケは、口ごもりながらも問いかける。

「『微熱』のキュルケだったね、確か」
「そう……『微熱』よ。常に燻り続ける火。切っ掛けがあれば直ぐに燃え上がり、でも同時に冷めやすい。一言で言えば惚れっぽいってことね。気に入ったら直ぐに手を出して、飽きたら捨てる。それの繰り返し。アプローチされてる男どころか、恋人のいる男を奪った事もあるわ。だから色々周りから言われたけど……別に気にしてなんかいやしなかった。奪われるような油断してたあんたたちが悪いんでしょって何時も思ってたわ」
「いや、流石にそれは酷いんじゃ?」

 真顔になったロングビルは、「まて」と手をキュルケに向けて差し出す。

「そう? ま、だからうちとヴァリエール家は犬猿の仲なんだけど……ん、ま、それで、あたしは色んな男に手を出しては、直ぐに捨てていたわ。好き(熱く)になって、手を出して、好きじゃなくなって(冷めて)、捨てて……ずっと繰り返して」
「……あんた友達いないだろ」

 上げていた手を力なく下ろしたロングビルは、ジト目でキュルケを睨み付ける。しかし、キュルケは何処吹く風と『何言ってんの?』っとばかりに不思議そうな顔を浮かべる。

「いるわよ」
「誰だい?」
「タバサ」
「他は?」
「……それで十分でしょ」
「はぁ…………まあいいわ。それで?」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ