第十一章 追憶の二重奏
第四話 初めての―――
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ないか?」
不思議そうな声に、キュルケは睨みつけていた視線をまたもテーブルに落とし、ロングビルから視線を逸らした。
「…………変なのよ」
「何がだい?」
「―――その、あたしも自分でもらしくないと思ってるのよ。だけど、その、何て言えばいいのか」
もじもじとテーブルに身体を突っ伏した状態で動かしながら、キュルケは恥ずかし気に小さな声を上げる。
「何時も、その、ここぞって時に、う、上手く身体が動かないのよ」
「は?」
「何時もなら…………前なら普通に、自然に出来たことが出来ないの」
ぴたりと動きを止めたキュルケが、ゆっくりと顔を上げる。
その顔はやはりロングビルに向けられず明後日の方向を向いてはいたが、
「何度かチャンスはあったんだけど、最近、あと少しでって所で、毎回考えてしまうのよ。あまり上手くやると、その、変に思われないかな? とか、嫌われないかな? とか―――いやっ! いやいやッ!! あっ、あたしも馬鹿な事考えてるとは思ってるんだけどっ! でも、不思議とそう―――って、何笑ってるのよッ!!?」
「―――っく、く、く、く、いや、その、ごめん」
褐色の肌を、薄暗い部屋の中でも直ぐに分かる程真っ赤に染めていた。
口元を抑え、腹を抑え身体をくの字に折って身体を震わせるロングビルの姿に、椅子を蹴倒して立ち上がったキュルケが指を突きつける。文字通り腹を抱えて笑っていたロングビルは、目尻に浮かんだ涙を手の甲で拭いながら笑いで震える顔を上下に振る。
「っいやごめん、ほんとごめん。ちゃんと笑う場面じゃないってことは分かってはいるんだけどね。しかし、その、やはり何というか」
「―――自分でも何を今更とか、キャラじゃないとか……どこぞの乙女かとは思ってるんだけど…………」
頭を抱え、キュルケはくの字に身体を倒してテーブルに突っぶすと、諦めたような疲れた声でぶつぶつと呟く。
「ま、いいんじゃないかい? つまり、あんたがそれだけシロウに本気で惚れてるってことだろうしね」
「そう思う?」
「年頃の女の子らしくていいと思うけどね。わたしは。ま、確かに百戦錬磨のキュルケさまにしては情けない限りだけど」
「っくぅ。やっぱり馬鹿にしてるでしょ」
テーブルから頭を上げることなく、キュルケは顔をずらし、上目遣いでロングビルを見上げる。
それをに笑って見下ろしていたロングビルだったが、不意に真顔になると、キュルケから顔を逸らした。
「……だけど、本当にあんたはシロウでいいのかい? あんたならもっといい男を選び放題だろうに、よりにもよって何であんな難しいのを」
「それをあんたが言うの? だけど、まあ、確かにそうよね。シロウはいい男よ。顔も、力も、頭も中々いないぐらいの。でも、探せ
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