第十一章 追憶の二重奏
第四話 初めての―――
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新学期が始まってから三日。
士郎たちは先日までの嵐のような日々から一転して平和で穏やかな日常の中にいた。太陽が中天に上る昼時。本日もまた、既に日課となった訓練を終えた士郎たちは、芝生の上に腰を下ろし、吹きよせる風に目を細めながらまったりとお喋りに興じていた。
「ふぅ〜……ああ、平和だ」
「平和だねぇ」
「うんうん。平和が一番」
士郎が事前に用意していた手作りのスポーツ飲料。果実の汁や塩等を混ぜて作った飲み物が入ったカップを両手で持ち、まるで縁側でお茶をすするお爺ちゃんのように飲みながら、士郎とギーシュ、そしてマリコルヌがしみじみとした声で呟いていた。その横に座るギムリとレイナールが、空になったカップを地面に置きながらそんな士郎たちに向け苦笑いを浮かべる。
「ずいぶんと心が篭った言葉だけど、やっぱり大変だったんだね」
「まあ、あの大国ガリアからタバサを救出したんだ、大変じゃない筈がないんだけど……」
ギムリの視線がのんびりした顔で、頭上を過ぎていく白い雲を追う士郎に向けられる。
「その際エルフを倒しただなんて……さすが隊長だと言えばいいのか。驚きすぎて一周回って冷静になってしまったよ」
「確かに、でもやっぱり一番驚いたのは、まさかあのタバサがガリアの王族だったってことかな」
レイナールが眼鏡の縁に触れながら呟いた瞬間、自分に向けられる鋭い視線に気付いた。覚えはある。視線を動かし、自分を見つめる相手と視線を合わせる。それは予想通りの相手であった。
「大丈夫。分かってますよ。誰にも言うつもりはありません」
「まだガリアは何の反応は見せてはいないが、どうなるかは未だ分からん。万が一と言うこともあるからな」
レイナールに頷いた士郎は、その隣に座っているギムリにも視線を向ける。士郎の促しに、ギムリもまた頷きを持って答えた。
「もちろん分かってます」
「頼むぞ」
学院に戻った士郎は、この一件についての一部始終を居残りをしていたギムリとレイナールには伝えていた。数点ほど話していないものはあったが、殆んど全てと言ってもいいだろう。そのため、学院に残っていたギムリたちも、救出の際『エルフ』が現れたことや、タバサがガリアの王族であるとを知っていた。まだ水精霊騎士隊が結成されてからそんなに時間は経ってはいなかったが、士郎は団員についてはそれなりの信頼を寄せてはいたため、絶対に他言しないことを条件に伝えていたのだ。
「しかしギーシュやマリコルヌまでもそんな状態になるなんて、想像以上にキツかったんだろうね。やっぱりエルフかい? それともアーハンブラ城に侵入する時? どちらも普通に考えれば不可能なことだしね」
「「……はっ」」
レイナールの同情混じりの
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