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嘆き
第二章
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「普通の僧では敵うまい。伊達に徳を積んできたわけではないからな」
「徳は時としてそのまま魔となります」
「魔となるか」
「そうです。嘆きや恨みが強ければそれだけ変わるものなのです」
 こう家光に述べるのだった。
「業となり」
「では普通の僧では成仏させるのは無理だな」
「そう考えまする」
 信綱は頭を垂れて述べたのだった。
「ですから僧は」
「神職でも駄目だな」
「同じことです」
 僧侶も神主も同じものだと考えられている。これは日本独自の発想であり彼等もまた同じであった。
「ですからそれもまた」
「では。どうすればよいのじゃ」
 ここまで話を聞いたうえでまた信綱に対して問うたのだった。
「何としても成仏させ民の不安を取り除かねばならんが」
「一つ。考えがあります」
 ここで信綱が家光に対して述べてきた。
「考えとな」
「はい、僧正は魔となっておられます」
 同時にこのこともまた述べられる。
「魔は断ち切られるべきもの」
「確かにな」
 家光もこの言葉には頷く。彼もこれは承知しているのだ。
「だからこそここは」
「伊豆よ」
 家光は真剣な顔で信綱の朝廷から与えられている官職を呼んだ。彼はいつも信綱をこう呼んでいるのである。実に親しい仲でもある。
「その話、しかと聞かせてくれ」
「喜んで」
 信綱の目が光る。そのうえで家光に対して囁く。二人の話が終わってから数日後。江戸から一人の男が中山道を上っていた。旅装束で頭には深々と傘を被っている。その為顔はよく見えない。腰には二本の刀がある。それを見ると彼が武士であることがわかる。彼は道を進みながら頭の中であることを思い出していた。それは。

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