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継承カタルシス
一章 「おかえり、弟」
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ぇなタイプが三種類あら。一つは浮気をする奴、二つは家族に嫌がらせする奴、そして最後は――――現実逃避する奴だ」
 そう言い終わると、俺は顔面に蹴りを入れられていた。あまりに突然の出来事で、見ていた隼介も蹴られた本人である俺でさえ何が起こったのかを理解するのに時間がかかった。
 ズシャァアと、新しい制服と足首が砂利で擦れた音がする。
 体が吹っ飛んだのだ。いや、これは誇張した表現でも何でも無い。事が全て終わった後に隼介に聞いた話だが、実際俺はまるでサッカーボールの如く綺麗な曲線を描いて5メートル程吹き飛んでいたそうだ。
 「嫌ぇなんだよ。お前みてぇな逃げ腰野郎」
 痛みをこらえて半分だけ目を開けると、もう既に黒崎は俺の腹を両足で挟む様に仁王立ちしていた。
 「いい加減認めろよ」
 「え――――」
 コイツ、今なんて言ったんだ? いや、本当は黒崎が何て言ったのかハッキリと聞き取っている。だけど、それ以上言われては困る。困る所の話では無い。この十四年間を、また――――また『やり直さなくちゃならない』なんて、もう御免だ。
 遠い記憶の断片の様な物が、またしても脳裏をチラつく。血だらけの両親と、姉と、まだ幼い俺。『しくじった』という言葉と共に、姉が両親の上に重なるように倒れ込む。それをただ呆然と眺める俺。俺の右手には、幼く小さい手に不似合いな――――
 少年の口が、ゆっくりと動く。止めてくれ、もう『繰り返した』くない。
 「――――お前」
 「言うなぁああああぁッ!! 」
 自分の物とは思えない程切羽詰まった断末魔が、周囲に響いた。と同時に、視界に入っていた少年の白い歯がいきなりボロボロと口の中からこぼれ出す。
 「かがぁッ、こ、こらぁヤベぇ」
 少年は後退りながら口を押え、少しの恐怖と身を切る様な怒りを俺に向けて来る。隼介を一瞥し、俺はすぐさま起き上がって駆け出した。
 「ちぃッ! 」
 俺が走り出すのを見た隼介も、慌てて俺について来る。黒崎は追いかけ様とするも、近くで座り込んでいる彼女を捨て置くのを躊躇したのか、追っては来なかった。
 「お、おい浅葱! アイツ何なんだ、愛染中って言ってたぞ!? 」
 「わ、分からない! でも、何でか追われるてんだ!! 」
 分からない、か。我ながら何とも可笑しな嘘を付いたものだ。何で《異質者》に追われているのかは追われている俺が一番知っていると言うのに。
 幸いな事に黒崎の声が小さかったせいか、俺と黒崎の会話内容は隼介の耳には届か無かった様だ。それで良い。聞かれて『居たら』それこそ終わりだった。
 隼介は気を使ってか、《異質者》の事についてそこまで深く聞き出そうとはしなかった。頼みの綱だった学校の教師に助けを求める手も、これで無くなってしまった。今学校に戻ってもまだ黒崎が居るかもしれない
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