一章 「おかえり、弟」
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れた。
消極的と積極的という全く正反対な俺達だが、何故だか不思議と馬が合った。
――――というより、こんな事をしている場合では無い。さっき出会った《異質者》の事を伝えなくては。
「ちょ、止めろって隼介。こんな事してる場合じゃないんだよ。つーか人にぶつかんだろ、てかもうぶつかった!」
右肩に凄まじい衝撃。見ると気弱そうな少女が右肩を抑えて俯いていた。
「ほら見ろ! 何やってんだよもう」
「うわわっ、済まん! 大丈夫か!?」
隼介が慌てふためいた声で問うと、少女はビクッと肩を揺らして俺と隼介を見上げた。
「ぇ……は、はい……」
青白い肌が、恐ろしい程綺麗な子だと思った。彼女の栗色の瞳と、視線が合う。
「……」
微かに匂う、鼻腔を刺す様な刺激臭。彼女の吐いた息からは確かにニコチンの臭いがした。
しかし何だろうこの子、それだけじゃない。
「……何だか、違う」
と呟くが速いか遅いか分からないぐらい同時に、彼女の瞳が赤みがかった。
ドロッと。
「へ……?」
隼介が間の抜けた声を出す。彼女は黙ったまま再び俯いた。
ボタボタ。
ポタッ、ビタビタビタッ、ビショッ。
「あぁ……ぁ」
俺は、思わず言葉を失う。
彼女は黙ったまま、自身の両目をそれぞれの手の平を抑えていた。
そして――――その両目から溢れ出す自身の血を黙って止血しようとしている。
新鮮な事この上ない、血。
少しだけ橙色がかった鮮血。
周りが彼女から距離を置く。ある者は悲鳴を上げ、ある者は逃げまどい、ある者は救急車を呼び、ある者は教師の元に走り出した。
それぞれがバラバラに散らばって行く中、俺と隼介と彼女だけが時が停まったかのように静止している。
一体全体、今日は何なんだ。
「――――こりゃぁひでぇ」
耳元で、聞き覚えの無い声が呟いた。
急いで振り返ると、途轍もない《違和感》を放つ少年が背後に立っていた。血を流す少女の姿を見ても然程驚く様子も見せず冷静な態度を取るその少年は、少女をじっくりと見物したのちに俺と隼介を交互に見た後に口を開く。
「おー、今年は豊作だな。全く嬉しかぁねぇけど」
赤毛の混じった自身の髪を掻き、吐き捨てた。
「俺らぁ愛染中二年の黒崎白兎。一応これでも《体育委員長補佐》やってら」
「愛染中ッ!?」
隼介が「愛染中」と言う言葉に素早く反応して目を見開く。
「……」
もう追ってきたのか。とここで、かも追って来るのが当然のように話している俺が怖くなった。
何を考えているんだ、俺は。
「……さして驚いてねぇのを見ると、そっちが浅葱だな?」
黒崎と名乗った少年は俺の方へ指を指した。
「俺にゃあどうしても嫌
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