一章 「おかえり、弟」
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反射する。少年が着ている学ランの校章よく見ると、史えみの着用している制服の校章と同じものだった。
「《母さん》からキツく言われてるんだ。《弟》は傷つけちゃ駄目だって」
先程浅葱に切られ長さがバラバラになってしまった髪の断面を指で弄りながら答える。
「それに――――無駄に刺激しちゃうと、不味いかも知れないしねー」
「《加害者》の言葉とは思しき言葉ですね。そんだけヤバい能力持ってるたぁ到底思えねぇですけど、根拠は何です?」
「うーん」
胡座をかいて頬杖をつく。少し考え込んだかと思うと、すぐさまキッパリと言い放った。
「勘だねー! 」
「……」
あまりに適当な返答に唖然となる少年。訪れる沈黙、漂う静寂。
「そりゃぁそうと――――」
空気に耐えられなくなったのか、話を切り出した。
「史えみの姉さん、きちんと『シール』貼りましたよね? 」
「勿論。背中に貼って置いたよ」
と言いながら史えみは微笑む。
「ちょっと心配だったから、背中以外にも何ヶ所か貼って置いた。これなら君の能力でどこに居ても『飛べる』でしょ? 《配偶者》君」
史えみの言葉に薄笑いを浮かべ、少年は口を開いた。
「ええ、勿論。《体育委員長補佐》の黒崎白兎にかかりゃぁ仕事もちゃちゃっと終わるって事、新しい《弟》に分からせてやりやすよ」
言い終わった直後、白兎はもう既にどこかへ『飛んで』いた。一人取り残された史えみは重たい腰を上げ、一つため息をついた。
「大丈夫かなー? 」
3
何とか死に物狂いで中学校に着いた時には人だかりが出来ており、予想以上の混雑だった。汗のせいでベッタリとくっ付いたシャツの気持ち悪い感触を感じながら、俺はあたりを見渡してアイツが居ないかを確かめる。
「可笑しいな……」
もうとっくに来ていて可笑しくない時間帯だと言うのに姿が見当たらない。
「……あ」
と、思った矢先に見つけた。
キョロキョロと周りを忙しく物色する寝癖の付いた頭。長い前髪を女用の赤いピンで留めている。
「隼介、こっちだよ」
片手を上げて、アイツの名前を呼んだ。すると隼介はすぐさま俺の事に気づき、人混みをかき分けて走って来る。おはよう、と言う間も無く隼介は俺の胸倉を掴んで来た。
「うぉおおおおい浅葱! お前来るの遅過ぎんだろ!! ちょっと家が近いからって余裕ぶってると遅刻しちまうぞ!」
ブンブンと頭が揺れる。毎度毎度の事だが、未だに慣れない。
隼介は俺にとって唯一友達と呼べる存在で、同じ小道小学校出身である。
俺は隼介とは違い人とコミュニケーションを取るのが上手い方では無く、二人組を作る時はいつも余る奴だった。
隼介はと言うと、俺とは違い明るくて馬鹿正直なところがあるせいか誰とも喋
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