ヘルヘイム編
第15話 咲の本気
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「これ、これからどう使おうか」
咲は6人の輪の中心に黒光りする戦極ドライバーを置いた。
このドライバーはチームのものだから、チームメイトに使い道を相談する。そんな当たり前のことで、咲の心臓はうるさいくらい鳴っていた。
「咲のスキに使っていいんじゃないかしら。もうインベスゲームはないんだし」
ヘキサがさらっと、呆気なく、とんでもないことを口にした。
「ヘキサ! いくらなんでも、そんなこと! ……でき、ないよ」
「どうして?」
「だって、これはあたしのベルトじゃない。リトルスターマインみんなのベルト、みんなの力だもん。あたし一人のワガママで使うなんてダメ」
首を横いっぱいに振った咲の、缶ジュースを持つ手を、ヘキサが両手で包み込んだ。
「今日までの募金活動でね、思ったの。縁もゆかりもない人たちから集めたお金で一つのことをする。わたしたちがベルトを買うためにお金出したのも、同じなんじゃないかしら」
「同じ?」
「今まではドライバーをチームのために使ってた。それはお金を出したのがチームのみんなだから」
反対側にいたトモが下から咲の顔を覗き込んできた。
「お父さん言ってたよ。募金で大事なのはお金を出してくれた人のキタイをうらぎらないことだって。この場合の『みんな』って、あたしたちよね。で、あたしたち、今まではアーマードライダーの力でステージを守って〜って思ってた。でも今はもうナワバリ争いがないから」
ナッツ、モン太、チューやん、トモ、ヘキサ。咲はみんなをまじまじと見返した。
彼らは本気だ。本気でベルトを咲の自由に使っていいと思っているのが伝わった。
「――ほんとにいいの? あたし、これ、悪いことに使うかもしれない。あたしがこれ、ヒトリジメしちゃうかもしれないよ」
「……咲は、しない」
「咲がそんなヤツだったらそもそも咲がそーちゃくしゃになるの反対してマス」
鼻の奥がツンと痛んだ。咲は込み上げそうになったものを慌てて噛み潰した。
「あたし、ね――思い出を作りたい。これからも、この街で。そのためにアーマードライダーの力を使いたい。ヘキサのお兄さんたちが地球を守って、紘汰くんが街を守るんなら、あたしはあの人たちが掬いきれないちっちゃなものを拾っていきたい。――ベルトを使うの、こんな理由なんだけど、みんなゆるしてくれるかな?」
「いいんじゃない? 葛葉さんと駆紋さんの戦いは、めぐりめぐってわたしたちを守ってくれてる。力になってあげられたらと思うのは、わたしたちも同じよ。ね?」
ヘキサの問いかけにチームメイトの全員が肯定を口にする。
咲は戦極ドライバーを、さながら宝物のように胸に抱く。その胸には新しい闘志が灯っていた。
「ありがとう、みんな。
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