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久遠の神話
第九十三話 炎の選択その六

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「怪物に負けたら洒落にならないからな」
「戦いを終わらせる為にはですね」
「剣士が戦う相手は剣士だよ」
 これはその通りだった、剣士同士が戦い最後の一人がその願いを願いを適えるのが剣士だからだ、怪物との戦いは彼等にとってはあくまで副次的なものなのだ。
「言うなら怪物は訓練だよ」
「剣士としてのですね」
「強くなる為のな」
 それに過ぎないというのだ。
「そこでやられたら駄目だよ」
「本当に本末転倒ですね」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「ラドンにも勝てよ」
「わかりました」
「まあ怪物に負けた剣士はな」
「そうした人は」
「この戦いではいないしな」
 それこそだ、一人もである。
「というかこれまでの戦いでも一人もな」
「いないんですね、そうした人は」
「やっぱり怪物はどれだけ強くても訓練の相手なんだよ」
「だからこれまでどの剣士の人もですか」
 神話の頃からだ、多くの剣士達がいたがというのだ。
「怪物に倒された人はいないんですね」
「それこそな」
「じゃあ僕も」
「最初の一人になるなよ」
 何度もだ、中田は上城に念を押すのだった。
「それはいいよな」
「はい、絶対に」
 それはだとだ、強く言った上城だった。
「僕もそれで敗れたくはないですから」
「怪物にはな」
「剣士にもだよな」
「そうですね、負けてはいけないですね」
「負けていい時と悪い時があるからな」
 中田は勝利至上主義者ではない、少なくとも彼が成敗したあの教師とは違う。
 しかしだ、このことも言うのだった。
「勝たないといけない時は確かにあるんだよ」
「それがですね」
「この剣士の戦いでな」
「今の僕ですね」
「そうだよ、戦いを終わらせたいんだよな」
「はい」
 絶対にだとだ、揺るぎない返事だった。
「そう決めています」
「そうだよな、じゃあな」
「それならですね」
「誰にも負けるんじゃないぜ」
 飲みつつ軽くだがだ、中田は上城にこのことを告げた。
「例え誰でもな」
「誰でもですね」
「ああ、約束してくれるか」
「約束します」
 上城は今は中田の言葉にあるものに気付いていなかった、そして気付かないまま確固たる考えで以て言うのだった。
「そのことも」
「だといいさ、じゃあ今日はな」
「こうしてですね」
「もう一本どうだよ」
 ワイン、それを勧める中田だった。
「本当に何本もあるからな」
「三本ですか」
「ロゼなんかどうだ」
 赤、白とくればだというのだ。
「それで」
「ロゼですか」
「ああ、どうだよ」
 こう言うのだった、そのうえで。
 上城は中田のその好意にも甘えた、それで二人で酒を楽しむのだった。二人は今は快く楽しめた。そして。
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