第六章
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視する彼は守備の悪い彼を不要と判断したのだ。
それならば、と獲得に乗り出したのは近鉄であった。パリーグには指名打者がある。守る必要はなくマニエルにとっても渡りに舟であった。
「しかしあのマニエルが西本さんと上手くいくかのう」
誰かが言った。マニエルは誇り高きメジャーリーガーであった。そんな彼が果たして西本に大人しく従うか。それに不安を覚える者もいたのである。
しかしそれは杞憂であった。マニエルは彼の人柄に惚れ込んでしまったのだ。
「ミスターニシモトはメジャーでも通用するよ。素晴らしい人だ」
彼は言った。冷静だがプライドの高い広岡とそりが合わなかった彼も西本の人柄には感じるものがあった。そして彼と共に優勝を目指すことを誓ったのだ。
彼の存在は大きかった。四番に座り打って打って打ちまくった。そして近鉄は首位を走った。
対する阪急は上田に代わった梶本隆夫が指揮を執る。西本が阪急の監督をしていた頃の左のエースだ。言うならば弟子である。こうして師弟対決が続いていた。
五月二九日には近鉄に前期マジックが点灯した。これで優勝は間違いない、誰もがそう思った。
しかし不運は突如として現われた。六月九日の日生球場でのロッテ戦である。ロッテの投手は八木沢壮六、かって完全試合も達成した男である。
マニエルは左打席に入った。そして八木沢の手からボールが離れた。このボールがこのシーズンの近鉄の運命を決定付けてしまった。
ボールはマニエルの顎を直撃した。怒り狂うマニエルはマウンドで呆然と立ち尽くす八木沢に挑みかかろうとする。しかし彼は口から血を噴いて倒れた。
球場は騒然となった。観客達も皆色を失った。
ロッテナインは八木沢と同じく呆然となっている。それに対して近鉄ナインの中には頭に血が登る者もいた。
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