ヘルヘイム編
第9話 血の成せるワザ
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紘汰が白いアーマードライダー――貴虎からヘルヘイムの正体を聞いたと知り、光実はすぐにでも貴虎の下へ乗り込んで釘を刺してやろうとしていた。
だが、ユグドラシル本社のエレベーターを降りた時、彼は思い出した。
自分もまた室井咲にヘルヘイムの正体を教えていたことを。
後ろでエレベーターが閉じる音がやけに牧歌的に響いた。
(あれは、咲ちゃんが何も知らないくせに責めるから。僕がどんな思いで裕也さんのこと隠してるか分かってなかったから。一つでも真実を突きつければ大人しくなるだろうって)
事実、あれから室井咲がインベス討伐の場に現れたとの報告はない。効果はあったのだ。
(でも、手伝ってくれなんて。一緒に戦ってくれなんて。言う必要はなかったはずだ。なのに僕はどうしてそんなことをあの子に言ったんだ?)
考える間にも足は動き、気づけば光実は貴虎のオフィスの前に着いてしまっていた。
(兄さんが紘汰さんに教えたからって、僕に兄さんを責める資格があるのか?)
光実はドアの前でためらい、引き返すこともできず、結局ドアをノックしてからオフィスに入った。
オフィスには部屋の主人である貴虎がいて、来客用ソファーにシドが座っていた。
光実は一拍怯んだが、歩いて行ってコートをソファーに放り、貴虎の前に立った。
「葛葉紘汰に“森”の秘密を教えたって聞いたよ。どうして?」
貴虎はファイル――戦極ドライバー装着者リストをデスクに放り出し、光実とまっすぐ目を合わせた。
「邪悪と見なしたものに対して、あそこまでまっすぐに怒りをぶつけられる奴を、久しぶりに見た気がしてな」
すこん。光実の中の疑問の、底が抜けた。
(同じ、だ。僕が咲ちゃんに秘密を話したのも、きっと、あの子ならはっきり怒れるってどこかで知っていたから)
「あのね、兄さん。実は僕もなんだ」
「――なに?」
「室井咲。あの女の子に教えた。きっと兄さんが彼に教えたのと、全く同じこと」
「光実、お前――」
「大丈夫。スカラーシステムやプロジェクトアークの実態は言ってない。そこまで部外者に教えたりしないから。迂闊だったと思うし、反省もしてる。でも教えてみたかった。兄さんと同じで、僕も、あんな子は初めてだったから」
自身の真意を隠さないで語ることがこんなに心地よいと、光実は初めて知った。
思えば今日までこうしてきちんと兄と語らった日があっただろうか。兄の行動に共感できた日があっただろうか。
“カクシゴトは、何をかくすかじゃなくて、カクシゴトしてるそのものが、キズナを壊しちゃう”
やがて貴虎が溜息をついた。
「今回の件は私にも同じ失敗があるから不問とする。――言いにくいことをよ
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