17話
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を求めていない。人は生存率に影響を与える外的要因の一つでしかなく、そこにイデオロギーは存在しえない。善も悪も、人の持つ評価基準でしかない。そこを間違ってしまってはいけない。いいね。カナメ。思いやりとは、相手を理解するところから始まるんだ。理解した風に安易に擬人化すれば、目が曇ってしまう。それ以上の理解を妨げてしまう。ありのままの植物を受け入れなさい」
目が、覚める。
勢い良く身を起こすと、森の香りが鼻腔をくすぐった。
辺りはまだ薄暗い。
隣には、目を閉じたまま動かないラウネシアの姿があった。亡蟲の迎撃後、ここまで戻ってきてラウネシアから果実をもらい、そのまま眠った事を思い出す。
ボクはラウネシアの樹体に背中を預けて、小さく息をついた。
まだ父が元気な時の夢。
懐かしい、と思った。あの時の言葉が、ボクと植物の関係を決定づけたと言っても良かった。あの時の父の言葉があったから、ボクは植物に対する理解を更に深める事ができた。感応能力による植物の感情というものが、一種の擬似的な物であることに気づいて、不必要な対話を行う事もなくなった。ボクにとって、父は偉大な植物学者だった。
本当に植物の事が好きな人だった。恐らくは母よりも、植物を愛していたのだろう。だから、破綻した。両親が離婚したのは、ボクが十歳の時だった。
ボクは父の言葉を反芻し、そして自虐的に笑った。
ラウネシアは、きっとボクの手助けを必要としていないし、それを望んでもいないだろう。
でも、ボクはこの戦争の行く末を、一つの結果を知っていた。
亡蟲がその答えに気づかないのであれば、火力に優れたラウネシアは亡蟲の侵攻を最後まで退ける事ができるだろう。
しかし、亡蟲がその答えに辿り着いた時、パラダイムシフトが起きた時、ラウネシアは敗北してしまう。
この森が、死んでしまう。
それは、ボクの望む未来ではない。
幼少期から、友達らしい友達は由香しかいなかった。人の心は覗けない。それが、ボクと人との距離を遠ざけた。
何度も何度も植物だけの世界を夢想した。お伽話のような空想を、ボクはずっとしてきた。そんなものが存在しないことを分かっていても、どこかで都合が良い世界を望んでいた。
この森の生存を望むのは、ボクの為だ。ラウネシアの為ではない。
ゆっくりと立ち上がって、背伸びをする。
薄暗い中、ボクは使えそうな木の枝を拾い集め、罠を作り始めた。
道具が限られている中、あの体格を持つ亡蟲を殺傷するには至らないだろうが、そんなものを作る必要はない。敵の機動力を削いで、大量に作れる簡易的な罠でいい。
それから、亡蟲がある戦闘教義に辿り着く事を見越して、今から準備を進めるべきだ。ラウネシアに進言す
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