第十六話 聖剣ですか禁手ですか
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彼らにつられ、木場も涙を流しながら、聖歌を口ずさみ始めた。
それは、彼らが辛い人体実験の中で唯一希望と夢を保つために手に入れたものーー。
それは、過酷な生活で唯一知った生きる糧ーー。
それを歌う木場は、幼い子供のように無垢な笑顔に包まれていた。
そして、彼らの魂が青白い輝きを放ち出した。その光が木場を中心に眩しくなっていく。
『僕らは、一人ではダメだったーー』
『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けどーー』
『皆が集まれば、きっと大丈夫ーー』
『聖剣を受け入れるんだーー』
『怖くなんてないーー』
『たとえ神がいなくてもーー』
『神が見ていなくてもーー』
『僕たちの心はいつだってーー』
『「一つだ」』
最後の一言。それは皆の心に聞こえた。
彼らの魂は天に登り、一つの大きな光となって木場のもとへ降りていく。
優しく神々しい光が木場を包み込む。
この世界には流れがある。
この世界に漂う『流れ』に逆らうほどの劇的な転じ方をしたとき、神器は至る。
それこそが、禁手。
闇夜を裂く光が木場を祝福しているかのように見えた。
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Said木場祐斗
ーーただ、生きたかった。
研究施設から一人逃げ出し、森の中で血反吐を吐きながら走った僕はそれだけを考えていた。
森を抜け、とある上級悪魔の少女とであったとき、命の灯火は消えかかっていた。
「あなたは何を望むの?」
死に逝く間際の僕を抱き抱え、紅髪の少女は問う。
かすれていく視界の中で僕は一言だけ呟いた。
ーー助けて。
僕の命を。僕の仲間を。僕の人生を。
僕の願いを。僕の力を。僕の才能を。僕をーー。
ただただ、それらを籠めて願った。それが人間としての最後の言葉だった。
「ーー悪魔として生きる。それが我が主の願いであり、僕の願いでもあった。それでいいと思った。けれどーー。エクスカリバーへの憎悪と同士の無念だけは忘れられなかった。・・・いや、忘れてもよかった。僕にはーー」
今、最高の仲間がいるんだ。
イッセー君、子猫ちゃん、紫さん。復讐にかられた僕を助けてくれた。
共に聖剣使いを探し回っていたとき、思ってしまったんだ。僕を助けてくれる仲間がいる。
「それだけで十分じゃないのか?」ーーと。
だけど、同士達の魂が復讐を願っているとしたら、僕は憎悪の魔剣をおろすわけにもいかない。
だが、その想いも先程、解き放たれた。
ーー自分達のことはもういい。君だけでも
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