第十三章
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初
て皆彼を高々と胴上げした。
「西本さん、遂にやりおったわ」
観客達は天高く舞う彼を見ながら言った。
「ああ、あの近鉄まで優勝させてもうたわ」
西本を胴上げする中にはマニエルもいた。彼は約束通り戻ってきていたのだ。
「負けてもうたな」
加藤はその胴上げを阪急のベンチから見ていた。
「ああ、残念やけどな」
そこに福本が戻ってきた。
「そやけど良かったわ。西本さんがああやってまた胴上げされたんやからな」
加藤は温かい声で言った。
「あの連中、遂に西本さんをまた男にしたな」
近鉄の三色のユニフォームが乱舞している。西本はその中央で選手達に囲まれている。
「五連覇もシリーズに出ることも出来んかったけれどな、ええもん見させてもうたわ」
「ああ、来年はあの連中を倒さなあかんな」
阪急ナインは口々に言う。
「そういう時はレンシュー、レンシュー!ゲンキ出していけばダイジョーブッ!」
マルカーノがナインに対して言った。彼はこういった時に雰囲気を盛り上げる貴重な人材であった。
「そういうことや、今から来年に向けて練習や、皆覚悟はええな!」
「おおっ!」
皆梶本の言葉に頷いた。そして球場をあとにした。
近鉄ナインは勝利の美酒を味わっていた。それは彼等がはじめて味わうものであった。
「長かったな」
誰かが言った。
「ああ、けれどわし等かてやったらできるんやな」
選手達はビールを浴びながら口々に言う。
「そうや、御前等は努力してここまで来たんや」
彼等の声をかける者がいた。
「監督・・・・・・」
彼等は皆西本の顔を見た。その顔は頑固でありかつ熱く優しいものであった。
「しかし勝負はまだまだこれからや。今度は日本シリーズに勝って日本一や!」
「おお!」
彼等は雄叫びをあげた。そして次の戦いに思いを馳せつつ今ははじめての勝利の美酒に酔いしれるのであった。
無名の戦士達の死闘 完
2004・4・16
[8]前話 [9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ