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無題(思いつかない)
無題
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としている。必死に内転筋に力を込める。遠くガスのタンクローリーが見える。全面スチールで丁寧に磨かれている。スロットルは戻さない。景色が消える。風の造る雑音が神経を集中させてくれる。「決して油断しちゃいけない」

サイゴハオイシイモノヲタベタカッタ

「ん?」亮太はタンクローリーから目線をずらして「ん?」と思った。

ナンデタネナンダヨ タネハナイヨ タネハ ハワイハニホンマモッテル タイヘイヨウマモッテルヨ タイセイヨウハ・・・ タイセイヨウハ・・・ アレ? アレ? ナンダッケ? ドコノシマ? タイセイヨウハドコノシマガマモッテルノカ・・・タシカポルトガル・・・スペイン・・ノリョウチ タイセイヨウノマンナカニ ソノウミヲマモルシマガアッタ・・・・ハズ・・・ウーン。アッ!アッ!アッ!

 ポン!という音とともに亮太の背中から半透明の子供が抜け飛び出る。それはちょっと舞い上がって地面に叩きつけられて転がった。育ちのいい中学生みたいな奴が亮太の背中を見つめている。「フーアブナカッタ・・・テクテク・・・」

亮太は混乱なんかしていない。ライダーススーツの左膝が少し擦り切れていた。深くバンクしたんだろう。ただ、ただ少しバックストレートに何かを置いてきちまったんだ。今、そのバックストレートに横たわっている亮太の大事なものが、街灯に照らされているのがわかる。きっとおぼろげな闇に横たわっているんだ。そしてそれは別れの挨拶も無く、しっとりと音も立てずに藪の闇に歩いて入っていく。そして二度と帰ってはこない。多分。
佐々岡の前に涎を垂れ流す亮太がいた。
「アキラがさ・・・喋ってるんだ・・・なんかさ・・・大事なもんを・・・工場の中でさ・・・・・・カツ、カツ、カツカツカツカツ・・・・鮭ちぎってさ・・・ミートソースかき回してさ・・・カツカツカツカツ・・・・たばっっ・・・たばたば・・・たばたばたー・・あはっ・・・ジンセイ花咲キャ散ル時オモウ・・・あはっ!」亮太は口角に荒い泡を立てて笑っている。口を空けるたびにそれが糸を引いた。瞳孔が夜と恐怖に似つかわしく開いている。焦点をぼかしているんだろう。佐々岡は何も反応しなかった。こんな状態は「膿が溜まった」って言うんだそうだ。とりあえず少し垂れ流しとけばいいんだと。けど、初めての元山には直視できない。目を合わせるとこっちの首が痙攣して目をそらしちまうことになる。どうすればいいかなって感じで視線をずらして髪を掻く元山に佐々岡が言う。
「こんなんしょっちゅうじゃないから。俺、送ってくから、メイメイ帰ってね」
「もう帰んの?」メンバーの一人が言った。
「今時間なら道もすいてるやん。飛ばしながら帰れや。亮太、トヨタで送ってくから。カワサキは神保が乗ってけや」神保って言うんだ。
「おい、伍一」と元山にも一緒に乗ることを指図す
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