オリジナル/未来パラレル編
第5分節 晶と!
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ザックや晶と話していて、咲は会話そのものの違和感に気づいた。
「何でザックくんも晶さんも、ヘルヘイムのこと知ってるの?」
紘汰、ザック、晶が互いに視線を巡らせ、輪になって溜息をついた。地味に効く精神攻撃である。
「12歳かどうかはともかく、本当に忘れられちゃったのね、私たち」
「どうすんだよ、紘汰。咲はウチの2トップだぞ。これじゃ仕事になんねえ」
当の本人を置いてけぼりのまま話は進む。咲が口を挟む隙がない。もっとも精神年齢12歳の咲に言えることなどないに等しいのだが、せめて質問の答えは欲しい。
「あの〜」
「ああ、何で知ってるかね。平たく言うと、紘汰が会社を起ち上げる時に教えてくれたからなの。びっくりしたわ。昔はよく出かけてたけど、てっきりバイト探しに走り回ってたんだとばっかり。事務なんかの仕事は、社会に出てない紘汰たちじゃ分からないことも多いでしょ? 心配だったから、それくらいなら私がやってあげようかしらって」
ヘルヘイムにまつわるアレコレを「びっくりした」の一言ですませる辺り、さすがは葛葉紘汰の姉。
「俺はバロンを抜ける時にこいつにスカウトされて、そん時に。おかげでようやく戒斗の行動もいくつか理解できたし」
「ザックくん、バロン辞めちゃったの? ダンスは?」
「そりゃ何年も続けられるもんでもねえし、ビートライダーズ。これでも粘ったほうだぞ。ダンスはまあ、時間が空いた時にな」
残念だ。戒斗と違い、ザックは純粋にダンスが好きでビートライダーズをしていたのに――あ。
「ねえ、戒斗くんは? 今何してるの?」
すると紘汰とザックが気まずげに顔を見合わせた。
まずいことを聞いたかと咲がハラハラしていると、ザックのほうが口を開いた。
「いなくなった」
「いなく――なった」
「バロンのリーダー辞めてすぐいなくなったんだよ、戒斗のヤツ。誰にも何も言わずに。まあ人に言い残してく性格でもなかったけど」
「そう、なの?」
「ああ。ペコなんかは今でも戒斗の行方をあちこち捜し回ってる。まさか戒斗に限って果実食ってインベス化、なんてないだろうが」
その意見には咲も大いに賛成である。いくら駆紋戒斗が強さ至上主義者であっても、自らヒトの尊厳を捨てるわけがない。そういうことなら咲も覚えている。
「知らなかった。大変だったのね」
「大変なのは咲ちゃんのほうでしょう」
晶が咲の頭を毛筋に添って撫でた。
「難しい時期にこんなふうになって。不安になったら言ってね」
「あり、がとうございます。晶…さん」
晶は疎ましく思う様子も見せず笑んでくれた。紘汰とよく似た笑みなのに、晶の笑顔はおかあさんのようで、咲は素直に肯いた。
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