第四章
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
向かった。そしてマウンドにいる鈴木に顔を戻した。
「あとはあいつがどれだけ踏ん張ってくれるかや」
彼は試合前に鈴木に言った言葉を思い出した。
「今日は五点の勝負やからな」
鈴木は六回は三者凡退に抑えた。そしてベンチに帰って来た。
見れば疲れが見えだしている。西本はそれを見て思った。
「やっぱりイモを行かせたのは正解やったな」
その言葉は七回に的中した。
七回裏、大沢は動いた。九番の菅野に代打を告げた。
「代打、富田勝」
富田であった。複数の球団を渡り歩いてきた業師である。
その富田が打った。ライトへのツーベースであった。
これが反撃のはじまりであった。一番の高代延博もツーベースを放った。
まだまだ続いた。島田と柏原も打った。これで二点が返った。
尚も無死一、二塁。そして打席にはクルーズである。後にはサモアの怪人と謳われた巨漢ソレイタもいた。
「監督」
クルーズとソレイタを見てコーチの一人が西本に声をかけた。
「言いたいことはわかっとる」
西本は一言そう言った。
鈴木にも弱点があった。それは一発病である。速球勝負を挑むことが多いせいかやたらとホームランを打たれた。その数は歴代一位である。
「そやがここはあいつに任せる」
西本はそう言ってベンチから動かなかった。腕を組み鈴木の投球を見守った。ここは彼のプライドと意地にかけたのである。
それは的中した。鈴木は見事クルーズを三振に打ち取った。そしてソレイタも。そして六番の服部敏和がバッターボックスに入った。
「打て!逆転だ!」
日本ハムファンは服部に声援を送る。服部の顔が紅潮した。
だがバットは空しく空を切った。三振に終わった。
「よし!」
思わずガッツポーズをする有田。マウンドの鈴木も笑った。ナインは大喜びでベンチに引き揚げる。
「しまった・・・・・・」
服部はボックスでうなだれた。だがそれをネクストバッターサークルにいた加藤が近付いて声をかけた。
「まだ二回ある。気を取り直して行こう」
「・・・・・・ああ」
服部はチームメイトの言葉に励まされ立ち上がった。そしてベンチに戻りグラブを手にとった。
「あと一点だ、いけるぞ!」
日本ハムのファン達も興奮していたあの連打が彼等を燃え上がらせたのだ。
だがそれを打ち砕く男がいた。有田が打席に入った。
有田が強気なのはリードだけではない。そのバッティングもそうであった。そしてパンチ力も備えていた。
その有田が打った。打球は日本ハムファンの絶叫を近鉄ファンの歓声を乗せてレフトスタンドに突き刺さった。
「これで終いだな」
大沢はそう呟くとベンチを出た。そしてピッチャー交代を告げた。
木田はマウンドを降りた。大沢はそれを迎えた。
「よくやってくれたよ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ