暁 〜小説投稿サイト〜
東方攻勢録
第二話
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
がふさがり始め跡形もなく消え去ってしまったのだとか。それをみた子供達はあまりの出来事に興奮したらしいのだが、それが里中に知れ渡った瞬間、里は大パニックになってしまったらしい。化け物や妖怪の子供などありもしないことを言い始め、なにも悪くない彼女の事をけなしていたようだ。しかしそんなことにもめげずに少女は元気に生き続けた。
 それからさらに数年後、辺りの子供達は年齢を重ねて行くごとに成長し、人並みに働くようにもなっていった。しかし少女の容姿は成長を見せることなく、老いることもなかったらしい。そのことで里中はさらにパニックとなり、ついには彼女の家族でさえ彼女を人間扱いすることがなくなってしまった。家族だけが支えでもあった彼女はそれがきっかけで完全に落ち込んでしまい、里にいることがいやになって逃げ出したとのことだ。
 そして数十年間山の中をさまよい続け、同じ症状を持った妹紅を見つけた事に喜びを感じた少女は、密かに彼女の後をついてきていたということだ。
「こんなかんじ……かな?」
「……」
 少女の話を聞いていた妹紅は、なにも言うことなく少女をじっと見ていた。よくよく考えてみれば自分も彼女と似た生活を送ってきた。里の人間には不老不死というのを理由に化けもの扱いされて、居場所を失ってこの山の中に逃げてきた妹紅は、自分の存在を保つために手当たりしだいの妖怪を探しては殺すといった生活をしてきたのだ。もし自分が彼女のように不老不死の人間を見つければ、必ず声をかけているだろう。そう考えると不思議と悲しくなってきていた。
「迷惑……だよね?」
 一人思いふけっていた妹紅を見て、少女は申し訳なさそうにそう言った。
「えっ……」
「ごめんなさい……でも、ちょっと嬉しかったんだ。自分だけじゃないって思えただけで、少し……救われた気がしたんだ」
 少女はそう言いながら笑う。その笑顔は確かに嬉しそうだったが、どこか寂しさを感じられた。
 迷惑なわけがない。妹紅はそう言おうとしていたが、長年人間とほとんふどしゃべっていない彼女はなんと口にしていいのか分からない。
「もう迷惑かけないようにするね……? それじゃあ」
 少女はスッと立ち上がってその場を後にしようとする。行かないでと言いたい妹紅だが、なぜか声を発することができずその場にたたずんでしまう。同じ状況に置かれている人間を見て、自分の中にも人の温もりを求めている自分がいることに気づけた。相手が不老不死だろうが関係ない。とにかく一緒にいたい……それが今の願いだ。
「……お前……戦えるのか?」
 強く願い続けていた心は、妹紅を無意識にそう言わせていた。
「……えっ?」
「戦えるのかって聞いてるんだ」
 再度そう問いかけると、少女は何も言わずに首を横に振った。それもそのはず、五十年は生きている彼女の体を見ても
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ