オリジナル/未来パラレル編
第3分節 9年後の沢芽市
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が、前にテレビで観たアメ横のように並んでいる。売っているのは野菜や果物。それらに集まる、人、人、人の波。
「紘汰くん、あれ何?」
「ユグドラシルの定期市」
「? スーパーとか道の駅で買えばいいのに」
「あ、そっか。――今じゃユグドラシルが定期的に開くマーケットでしか生鮮野菜なんて手に入んねえんだ。ヘルヘイムの植物があちこちに生えるようになったせいで、土壌が汚染されてるかもしれない土地の野菜なんて買いたくないって風潮になってさ」
「へえ……」
「それだって社員割引とかでユグドラシル・コーポレーションの社員のが優遇されてるし。どうしても食卓が保存食メインになるって、姉ちゃん嫌がってたなあ」
「紘汰くん、お姉さんいたんだ」
紘汰が目を瞠って咲をふり返り、それからはっとして手を振った。
「あ、うん。いるんだよ。姉一人。ウチ、親が小さい頃に亡くなってて。姉弟二人きり」
「そうだったの……ごめんね。イヤなこと言わせちゃって」
「慣れてるからいいって。――街は大体こんな感じなんだけど、何か思い出したりした?」
考え込み、これらのものを憶えているか頭を探る。
「ごめん。思い出せないみたい」
すると紘汰はおもむろに咲の手を握った。寒いのに、温かい手。
「じゃあ次は俺たちの秘密基地行ってみようぜ」
「ヒミツキチ」
「――や、なんか、会社、って言うの気恥ずかしいっつーか。要するに俺らのホームっていうか。俺も咲ちゃんもそこで働いてるから」
特に反対する理由もない。咲は素直に肯いた。
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