少女の作る不可測
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っとあんたは乱世の後にあるはずの自分の幸せを考えてない。だから特別な誰かと一緒に生きたいなんて欠片も思ってないんでしょう? 他人が何か言った程度ではこいつを救えない。心の底から自分の幸せを願わないと秋斗は救われない。
戦争は人を変える。そして王の成長等と正解かどうかも分からない事をしているという行いが秋斗の心を徐々に蝕んでいた。正解等無く、自身が選んだ道を手さぐりで突き進むしか無いのは乱世の常であるが、彼はどの王とも違う理由でそれを行っている為に壊れて行く。既に他人を信じる事でしか自分を信じられず、その毒は自分では気付けない深い部分に染み込んでしまっている。
詠は洛陽から今まで近くで見て、さらに雛里と多く関わった事によって秋斗という人物像を少しずつ掴みはじめていた。
責任感が強く、一つの曲がらない基準線だけを元に行動し、自分以外の多くの人の幸せを願う男。効率を求めれば作る事の出来る小さな平穏を捨てて、長い乱世による今までよりも大きな平穏を作り出そうとする男だと。
対立はどのような組織でも不可避の事柄であり、良い方向に向かわせることが出来れば誰しもが競い合い高め合える事となる。ただし内部のみでないとすぐに乱れる為に天下の統一は絶対に必要な事。曹操や孫策の覇道に対立出来る大徳は言うなれば長い治世を作り出す為の一つの手段である。董卓という王の元で政治を行っていた詠はそんな彼の思惑が一つの正解のカタチである事をよく理解していた。
――でも優しいくせに馬鹿げてるわよあんたは。ボク達に幸せになってくれと願うなら……あんたも一緒に幸せになりなさい。
ふいと顔を上げた詠の瞳にはもう悲哀は無く、せめてこの愚かで優しい男を少しでも助けてやろうと話を変えた。
「ま、いいわ。話を戻しましょう。とりあえず孫権は真正面から叩く事に決定でいいわね。捕えるにしても討ち取るにしても後々問題が出るのは確定だから敗走させるように戦うのが最善だろうし」
いつもの調子に戻って秋斗に話す詠は軍師の瞳を湛えていた。うだうだと悩んでいても仕方ない。現実として迫りくるモノを優先するべきということ。
「しかし孫権かぁ……孫策よりもあれの方が重要だろうからなぁ」
ぽつりと漏らされた言葉を聞いて詠が訝しげに見つめ、秋斗は少しハッとして慌てて言葉を続ける。
「単純な武力を持って人を導く存在じゃなくて人を繋ぐ可能性を持った人材かもしれないって事だ。内政の状況を見ても孫権の配属されている地域は少しだけ他よりも人心がいい具合だし。乱世で戦うなら孫策、乱世の果てに生き残らせるなら孫権がいいかもな。まあ、本人の王才がどの程度か、治世に必要な人材であるかは戦場で言葉を交わして少しでも見極めさせて貰うが」
驚いて齎された情報に書かれた部分を見る詠は気付か
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