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乱世の確率事象改変
少女の作る不可測
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で家族や親族を大切にしないのならば従うモノも自然と少なくなっていくのだから。

「それよりも、ついさっき孫権が行軍中って情報が入ったんでしょ? どうするの?」

 詠がビシリと秋斗の目の前に指を突き立て、迫る次戦の事に話を向けてきた。ついさっき入った情報は孫呉の次女がこちらに向かっているというモノ。雛里と月を呼んでもいいのだが、さすがに仮眠室に行った所なので先に自分達だけで話しておこうと詠だけを呼んでおいたのだった。

「俺としては孫権の率いる軍は全力で潰して、孫策が出てくるまで戦線を維持しつつ待とうと思う。というより、孫呉が袁術に反旗を翻さない理由がしっかりと分からん以上、あっちから何かしらの働きかけが無ければ押し返し続けるしかないだろうよ」
「大体やり口は分かるけどね。あそこは人質ばっかりよ。権力を笠に着た強制的な婚姻関係とか重要な立場への任命とは名ばかりで身内で固めた所に放り込むとか」

 本当にあいつらはと憎らしげに眉間に皺を寄せる詠の言葉に予想はほぼ確定だろうと思考が固まり始める。

「人質ねぇ……」

 秋斗は自分がそれをやられた立場になるとどんな気持ちになるのかと少しだけ想像を巡らせてみた。
 誰かを人質に取られたらどうするんだろうか。助けようとするのか、平然と切り捨てるのか、彼には考えても全く分からなかった。

――きっと足掻いて足掻いて最後まで助けようとするのが普通なんだろうなぁ。

 しかし絶対にそれを選ぶとは彼には言えなかった。
 虚空を見つめて思考に潜る秋斗を厳しい瞳で見る詠は哀しげな顔に変わる。彼の瞳にあった困惑の色を見てしまった為に。
 殺した人間の想いと、先に生き残る人々を想うと人質を切り捨てる事を容易に選んでしまうのではないかと詠は言い知れない危機感を覚えた。

「ねぇ秋斗。全てを捨てちゃダメよ? それだけはダメ。あんたが乱世の果てに生き残る人達の為に戦ってるのは分かってる。でもボクにとっての月みたいに零しちゃいけない人も見つけないとダメ。何が何でも助けたいって思える人を見つけなさい」
「何が何でも……か」

 彼にとっては一番近くてかけ離れた言葉。
 何が何でも乱世を終わらせて平穏な世界に変えるのが自分にとっての目的と存在理由であるのに……それを捨ててまで誰か一人を助けようなんて考える事があるんだろうか、と彼は何故か自分の心が理解できなかった。

「……ゆっくりでいいわよ。あんたが……っ……変なのは知ってるから」

 顔を俯けて言う詠の表情は彼には見えていない。俯きながら悲哀にくれる顔をしていた詠は、寸前の所で『壊れてる』という一つの言葉を言い変えた。

――あんたが壊れて来てるのは分かってる。もう既に手遅れかもしれないくらいに歪んでしまってるのも分かってる。き
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