少女の作る不可測
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は強ければ強い程に良く、その心は次世代へと繋がる。例え一人の兵であろうと、少しずつ世代を超えて繋いだ想いは未来の力となり得る。秋斗の目指す所からは絶対に譲れない事だった。
そんな兵達の訓練を通常のメニューで行い、新参も含めての徐晃隊の訓練は副長に任せて幾日。
現在、袁術軍は不気味なほどに静かであった。本陣は極めて遠くに布陣されておりこちらからは手を出す事も出来ず、初戦の大敗で警戒しているのか別働隊を派遣するでもなく、まさしく睨み合いと呼ぶべき状況にある。
秋斗としては早々に孫策を引きずり出して共に袁術を討とうで終わらせたいのだが、荊州侵攻の現状と風評の関係からまだそれは先になるだろうと雛里や詠に言われていた。さらには、孫策が自身で事を起こさない重大な何かがあるのではないかとの予想もつけられていた。
対して袁術軍の方は本陣に駐屯している兵は三万を超え、本城にも三万強を残していて、さらに募ることが出来るというのだから恐ろしいというべきか。
遅れて集まってきた袁術領の現在状況の報告に秋斗は一通り目を通し、お盆を膝の前に持って隣に控える詠に目をやった。
「人材の不足がこれだけ際立っているというのに……袁術陣営の参報、張勲は化け物だな。詠はどう思う?」
「ボクなら……いや、認めるわ。人心に目を瞑るのならこのやり方は一番いいし、これだけ短期間で準備しきる手腕は凄すぎるわよ。ってか秋斗って内政もいけたの?」
「知識と経験上ある程度はな。練兵と軍の業務が忙しいし朱里と雛里が出来過ぎるから関わらないだけだが。まあ、内政の力は詠にも月にも敵わないよ」
「それでも謎過ぎるわよあんた……はぁ」
少し雑談を交えてから詠がため息を一つ。
内政については現代知識と白蓮の所にいる時の経験だ、とは秋斗も言わない。鈴々は追加兵の訓練で今日は帰って来ず、雛里と月は少し仮眠を取っているので今は詠と二人きりという珍しい状況に居た。
齎された情報、袁術の所の人心安定は最低線と聞いていたが、二人共が上手いなと心底感心している。
――生かさず殺さず、絞れるギリギリのラインを維持しつつ、軍の方も有能な将が少ないままで練度は疎かなれども管理は十分という。兵を集めるにしても仕事が出来るのだから貧しい者達はわらわらと集まるだろう。兵法の基本である数はすぐに整うというわけだ。
さらには虎を顎で使える程の何かを持っている。それについては大方、予想は付いているのだが。
精強な孫呉の者が反旗を翻せない程の何か、従うしかない状況に追い込ませる事の出来るモノ、袁家が手段を選ばないのならば……人質くらいであろう、と。
孫策は名が傷つく事を恐れるような薄い輩では無く、そのあたりの脅しは不可能。なら誰かしら家族を人質として確保されていると考えるのが妥当。儒教社会
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