少女の作る不可測
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鍛えた精兵じゃし、儂が率いるんじゃから何の心配もいらん。堅殿のカタキ打ちは孫呉の大望が終わってからゆっくりと、というのだけが口惜しいが」
「言わないの。個人の怨恨より今は民の救済、抑えて頂戴」
ギシリと、力強く握られた拳を後ろ手に隠して言葉を紡ぐ。私だってすぐにでもこの感情をぶつけてしまいたい。だが……王としては未熟に過ぎる。母さまの願いはなんであるか、一番大切な事はそれなのだから。感情を抑え、大局を見て最良を判断出来なければあの偉大な虎を越える事は出来ず、死して出会った時に未熟者めとこっぴどく叱られてしまう。
「冥琳、蓮華達を信じるのはいいんだけど……私達から何か伝えておくべき事案はあるかしら?」
大望の為にはここから一つとして失態は許されない。きっとギリギリの状況となるだろう。時機にしても、速すぎても遅すぎても些細な歪みが崩壊へと繋がる。でも私達に出来る事はきっと――
最愛の人に問いかけると、彼女は一寸だけ額に手を当てて少し目を閉じ、
「劉備軍との戦中交渉は未だに多くの戦力を残す袁術側への不振の種を撒くことになり、小蓮様の安否に関わって来る為に現状では出来ず、欺瞞反乱についても我らが出向くのが先になるが……袁家の諜報を警戒して伝令を送り合わずに阿吽の呼吸で全てを回すのが最善だろうな」
分かっていて聞いているだろうというように私に呆れと信頼の籠った流し目を送って来た。
「ふふ、じゃあ若い世代の力量に期待しましょう。……我らは荊州への攻撃に集中する事を命じる。孫呉の地奪還の為に、行動を開始せよ」
最後に気を引き締めて言い放ち、御意という三つの声を聞いてから私は天幕の外に出て妹のいる方角を見つめた。
――そっちは頼んだわよ蓮華。皆で全てを取り戻せたら……少しだけ、昔みたいに甘えてもいいから。
蓮華の敵は強大であるはずなのに不思議と嫌な予感はせず、自分の自慢の妹なのだから大丈夫と胸を張って思える事が少し誇らしかった。
†
徐州内各地からの兵の補充は万全であり、現在の駐屯兵数は付近の城に集まった分も含めて三万に届くかどうかという程。赴任したての劉備達にとっては初戦を乗り越えられるかどうかが最初の問題であり、無事乗り越えた今となってはこのように余裕が出来ている。
一重に恐ろしいと感じるのは桃香の影響力であろうか。集まった兵は誰しもが口々に己が安息の地を大徳の元で守るのだと息巻いていた。
それらの兵は劉備軍本隊の末席へと組み込む為に、秋斗は徐晃隊とは関わらせないでおいた。徐晃隊のような狂信者となってしまえば、後に事が起こるとこの地に残らせる事も出来ず、この地に思い入れのある兵そのモノが少なくなってしまう為に。
自分が生まれた地を守りたいのは誰しも当然、想い
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