少女の作る不可測
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る瞳は普段の自身なさげな彼女とは違い力強いモノ、何よりも……信頼という名の色がまざまざと浮かんでいる。
蓮華は彼女の想いを感じて――ふっと笑った。
――私は何を肩肘はっていたんだろうか。皆が必死に孫呉の地奪還の為に動いている中、自分に任された責任の大きさだけに捉われて焦っていたんだ。姉様のようにならなければ、と。
「それと蓮華様、今回の戦の目的を見誤ってはいけませんよ」
優しく言い聞かせるように言われて蓮華は目を見開き、亞莎の言葉の真意を理解した。
「ありがとう亞莎。私の為に使ってくれるというあなたの力、心の底から頼りにしている」
彼女もここで謝る事はしない、否、出来ない。既に王の後継者たるが故に。ただ、
「皆の力でこの山場を乗り越えましょう。それと……あなたがいてくれて本当に良かったわ」
優しく包み込むように全てを繋ぐのが彼女の王才。
微笑みながらの言葉に亞莎も笑顔となり、二人でクスクスと笑い合った。
雪蓮と冥琳のような形では無くとも、彼女達の間には確かに信頼という絆が結ばれていた。
†
荊州での戦場へ向かい、陣の設置と軍議を行っていた私達の元に一つの報告が入った。
計画の為に残しておいた蓮華と亞莎、そして思春と明命が徐州の戦場へと向かった、と。
その報を聞いた冥琳は苦い顔をしながらも即座に知性の宿った瞳を携えて思考に潜り始める。
「ま、まさかそんな手で来るとは思いませんでしたね〜」
大きすぎる胸の前で手を組んで緩く言う穏の額からも冷や汗が滲み出ていた。
皆一様に顔が昏く落ち込み、計画に支障が出た事の重大さを考えて落ち込んで行く。
「策殿、さすがにひよっこどもに徐晃と張飛相手は荷が重い。あれらの力は黄巾と連合でよく知っておろう。儂らくらいでないと抑えられん」
そう、祭が言うように下手をすれば誰かが命を落としかねない。いくら寡兵であると言ってもあの燕人と黒麒麟、さらには冥琳でさえその才を認める鳳雛が相手。確実に格が違う。
身内であればこそ実力は分かりきっている。明命も思春も野戦に於いてはあの二人には届かなくて、亞莎では鳳統に出し抜かれる可能性が高い。蓮華もまだまだ未熟。用兵にしても、王として軍を率いるにしても。
ここで向かわせられるとしても祭のみ。こちらの被害が増える事は痛いが……それでも誰かを失うよりはマシだろう。
目まぐるしく回る思考の中から掬い取った決断を口に出そうとしたが、
「このまま荊州侵攻を開始するべきだな」
己が軍師の発言によって寸前の所で呑み込んだ。呆気にとられる私達三人を冥琳はゆっくりと鋭い瞳で見回し、最後に私に向けて優しく微笑む。畏れてはダメよ、というように。
瞬時に、彼女が何を
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