少女の作る不可測
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彼女はその二つが誰に似ているかに気付いた。それならばこの状況も、認めたくは無いが有り得た事態だと納得出来た。件の男は、将としてならば知り合いに似ていて、同じように隣に居る軍師も影響を受けているとすれば――
思考に潜り、そのような相手に対してどのように攻めて行くかを考えている途中で……天幕の入り口に人の気配が一つ。
「七乃ぉ〜! 妾はいい事を思いついたのじゃ!」
とびきりの笑顔で飛び込んできた美羽の姿に七乃の表情が綻ぶ。
――私の宝物は今回、どんな天然策略を思いついたんでしょうかねぇ。
美羽の真価は悪戯。七乃はそれをよく理解している。誰もが困る事を簡単に思い浮かぶ天然の悪女。頭を捻らずに素で出した答えが案外上手くいったりするのだから恐ろしい事この上ない。
その点で言えば、こちらにも相手が読む事の出来ない不確定要素な存在がいるのだと七乃は少し安堵した。どんな素敵な悪戯なんですかぁ、と問いかけて、
「聞いてたも! 孫策の奴がいないのなら妹に攻めさせればよかろ? そうすれば妾の兵の多くも死ななくて済むし、のんびりとめいぷるしろっぷのお菓子を食べながら蜂蜜水を飲めるのじゃ!」
どうじゃ名案じゃろと腰に手を当て、僅かに膨らんだ胸を張ってはしゃぐ美羽の答えに、七乃はその手があったかと内心でほくそ笑んだ。
†
苛立ちをそのままにその少女は地を踏みしめて歩いていた。桃色の長い髪、褐色の肌、深い蒼の瞳、孫呉に於けるまだ若き王の名は孫権――――真名を蓮華。
袁術から下された一つの命令が苛立ちの原因である。
『孫堅世代の兵を三千戻す、足りない分も兵を貸すので徐州劉備軍との戦場に向かえ』
姉である雪蓮、筆頭軍師である冥琳とその後継者である穏、宿将たる祭は荊州への侵攻に向かっている。
実は……彼女達の秘策はこの蓮華に大きな役割を任せていた。極秘情報として呂布が荊州にいると分かった以上、まともにぶつかりあっては甚大な被害を被る事は確定的。
秘策であったのは――大きすぎる民の期待を利用しての欺瞞反乱。極秘に放った細作達の扇動によって起こるそれを一時的に抑える役割が蓮華には任されていた。一時的、というのも彼女だけでは抑えられないとして雪蓮を呼び寄せての荊州戦線の強制膠着が本当の狙い。それも徐州へ侵攻している袁術軍の被害が大きくなるまでの間だけ。そこからは曹操との密約通りに。
念入りに計画を遂行してきたというのにたった一つの命令で全てが崩れた。
通常の人物であれば、優勢になってしまうと孫呉に向ける民の風評が高まってしまう為に孫呉のモノを初期段階から呼ぼう等とは考えるはずがない。しかも国境付近に駐屯している劉備軍は少数であり、袁術への支持は大いに下がる事が分かりきっているとい
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