少女の作る不可測
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霊薬にもなり得るモノ。
軍師の二人は能力が夕と同程度である事は分かっている。綺麗な戦の仕方を好む事も知っているのでそこが大きな隙のはずだった。夕と同程度が二人もいるのは骨が折れるが、計画が発動すれば問題は無くなる。
関羽は紀霊よりも少し実力が上の武人。特筆すべきは堅実にして豪胆な用兵。そして劉備への忠義を貫くある意味扱いやすい存在。
張飛は実力は高いが突撃思考の大きな武人。ただ、そのような単純バカな将が厄介でもある。
そして徐晃――――
そこまで至って彼女は眉を顰めた。
劉備も、諸葛亮も、鳳統も、関羽も、張飛も……全てが過去まで見通せる程に情報を集めてある。生い立ちから今に至るまでの人物像が調べつくされている。故に、それらは正確に把握が出来る。
その男だけが異常なのだ。
厳格な規律の多い徐晃隊に間者が入り込めないというのも理由の一つではあるが、他の部隊に忍び込ませたモノや城に放ったこちらの息の掛かった侍女等々、情報収集に送り込んだ誰しもがその男の生い立ちから今に至るまでを調べられない。徐という姓は数多くいても、徐晃がどこで生まれた人物かも分からず、どうやって今の徐晃に至ったかがぽっかりと抜けている……まるで突然現れたかのように。
劉備軍に入ってからのその男の事は確かに分かるが、行動からのみの判断しか出来ず、個人の趣味嗜好にしても子供と戯れる事と料理が好き程度しか情報が無く、個人が辿ってきた軌跡等は全く出て来ない。旅をしていた……その一言で全てが終わるだけ。何処を、どのように、なんの目的で、その全てすら無い。
七乃は徐晃の事を一番に警戒していた。
個人の事が調べられない、それもある。ただ、一番警戒するべき所は別にあった。
徐晃は矛盾の塊だった。
徳高き行いをするくせに残酷で、友を大切にするくせに平然と切り捨てて、劉備軍であるのに劉備軍とは似ても似つかない部隊を率いている。
夕からは同類であるとは聞いている。大切なモノ以外いらないという異端者であると。全てを巻き込み犠牲にして身を捧げてでもそれを守りたい異常者であると。
その範囲が膨大に過ぎる徐晃はまさしく異常。たった一人や数人を想うなら分かるが、生き残らせる全て等と……どれだけ傲慢で愚かしく哀れで、何より狂っているのか。そのようなモノの思考は自分がイカレているという自覚のある七乃でさえ読むことが出来なかった。
彼女が警戒する所はその点。何をするか全く分からないという事。情報という武器を使って戦ってきた彼女からすれば天敵と言えた。
数少ない情報から判断出来たモノはその男の周りに与える影響力。徐晃隊という異常な兵の存在と……戦事に於いて大抵の時間を黒麒麟の隣で過ごす鳳統。
――あ……なぁんだ。私は似たようなモノを知ってるじゃないですかぁ。
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