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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
外伝
外伝1:フェイト編
第14話:ひとりの少女
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字にすればそんな音であろうか。
何か硬いものがぶつかり合う音に続いて高いところから
やわらかいものを落としたような音が通路に響いた。

「えっ・・・と・・・・・あれ?」

その残響の中で直前まで気を張っていた曹長が間の抜けた声を上げる。

「はあ?」

後方からことの成り行きを見ていたヒルベルトもあんぐりと口をあけて
ひっくり返った甲高い声を上げる。

2人の目線の先にはついさっきまでA分隊の面々に襲いかかろうとしていた
化け猫がぐったりと倒れていた。

何が起こったか。
端的に言えば、化け猫が曹長たちに襲いかかろうと飛び上がり、
大して高くもなかった通路の天井に思い切り頭をぶつけて
床に落ちたのである。

「えーっと、分隊長。 これ、どうしましょう?」

「あー・・・・・っと! まだ死んだとは限らないんだから気ぃ抜くなっての!
 とりあえず、そいつがどうなったのか確認だ。 慎重にな」

「はい。了解です!」

気の抜けた口調で尋ねる曹長に対して、同じく気の抜け口調で返しかけた
ヒルベルトであったが、途中で化け猫が気絶しているだけという可能性に思い至り、
殊更大きな声で曹長に指示を出した。
それに勢いよく答えた曹長は近くにいた数人を連れて床に倒れたまま動かない
化け猫の方にゆっくりと近づいていく。

曹長がすぐそばまで来て見下ろしていても、化け猫は依然として
ピクリとも動かない。

(死んだのかな・・・?)

曹長はその生死を確かめるべく、自分のデバイスで化け猫の頭を数度軽く小突く。
すると、その衝撃で化け猫の頭がグルッと向きを変えた。

「うわっ!!」

化け猫が目を覚ましたと思って驚いた曹長たちは
おもわずのけぞって悲鳴のような声をあげる。

上向きになった化け猫の顔にある赤く光る目が妖しく光り、
曹長は睨みつけられたように感じてハッと息をのむ。

だが化け猫はやはり動く様子がなく、落ち着きを取り戻した曹長たちは
化け猫の顔を覗き込んだ。
化け猫の額には青く輝く宝石のようなものが埋め込まれていた。

それをじっと見ていた曹長はあるものを見つけておやっと思った。

(あれ? ひび割れてる?)

それは宝石の表面に走る幾筋かのき裂であった。

「どうした?」

ヒルベルトに背後から声を掛けられ、曹長は振り返る。

「いえ、この額にある石がひび割れてるようなんで・・・」

「なんだって?」

曹長の報告を聞いたヒルベルトはわずかに目を見開くと、
化け猫の側に屈んで額の石をじっと見つめる。

「確かにひび割れてるな・・・」

ぼそっとごちるように言ったあと、ヒルベルトは宝石に指を伸ばしかけて
寸前で止めた。


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