暁 〜小説投稿サイト〜
機動6課副部隊長の憂鬱な日々
外伝
外伝1:フェイト編
第14話:ひとりの少女
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
かめながら言う曹長の言葉を聞き、ヒルベルトは苦笑を浮かべる。

「それには俺も同感だ。 できればそそくさと退却したいとこだな」

そこでヒルベルトは真剣な表情をつくり、暗い天井に目を向ける。

「けどな、上で必死になって戦ってる連中がいるんだ。
 俺らが逃げていいって話はねえよな」

そう言ってヒルベルトは通路の先にある暗闇を睨みつけた。

ちょうどその時だった。
暗い通路の奥からずぅぅぅんという重たい音が響いてきたのは。
通路の壁が震え、ひび割れかけた表面の塗装がパラパラと床に落ちる。

A分隊の隊員たちは恐怖感から近くの仲間たちとひそひそ話をし始め、
その声が重なり合ってざわつく。

「落ち着け!」

ヒルベルトが鋭い声で一喝すると、分隊員たちは口をつぐみピッと背筋を伸ばす。
そのさまを首だけで振り返って一瞥すると、ヒルベルトは再び通路の奥に
目を向ける。

「あの音の正体が何にせよ、そいつに対応するために俺達はここに来たはずだ。
 今さら取り乱してんじゃねえよ」

「はい! すいませんでした!」

吐き捨てるような口調でヒルベルトが続けると、後に続く隊員たちは
腰を90度に折り曲げる。
もう一度隊員たちの姿を一瞥したヒルベルトは、今度は隊員たちの方を振り返る。
顔をあげた隊員たちの目には微笑を浮かべたヒルベルトの顔が映った。

「大丈夫だ。 お前らの実力をしっかり出せば大抵の敵には
 後れをとるようなことはねえよ。
 これまで積んできた訓練と実戦の経験を信じろ。いいな!」

「はい!」

「よし! じゃあ先に進むぞ。 周囲の警戒を厳にな」

ヒルベルトの鼓舞によって士気をあげたA分隊の面々はそれぞれが
周囲に注意を払いながらゆっくりと進んでいく。

やがて、通路の先にぼんやりと明かりが見えてくる。
それは通路が折れ曲がっている地点のようで、壁面がぼうっと光を反射していた。

(あそこは電源が生きてるってことか・・・。嫌な感じがするな)

ヒルベルトはその口を真一文字に引き結び、わずかに目を細めて
警戒の度合いをあげる。
ヒルベルトの纏う雰囲気が少し変わったことを敏感に察したA分隊の分隊員たちは
近くの仲間と一瞬顔を見合わせ、それぞれのやり方で周囲への警戒を強める。

全員が慎重な足取りで通路を進み、折れ曲がりの直前まで来ると先頭を歩いている
ヒルベルトがピタリと足を止める。

(空気がピリついてやがる・・・)

ヒルベルトの額を汗が一滴滑り落ちる。
その滴が顎の先から滴り落ち、小さな音を立ててじめっとした床にしみを作る。

(くそっ、ビビってんのか・・・俺)

己の冷や汗が床に落ちた音でその事実を認識させられたヒルベルトは、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ