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八条学園怪異譚
第五十九話 時計塔の話その五
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「何かを無事にやり遂げるってことだからね」
「それも成功で、ですね」
「終わらせるってことなんですね」
「それならお祝いしないと」
 駄目だというのだ。
「そういうことよ、じゃあいいわね」
「時計塔に行った後はですか」
「派手なお祝いですか」
「さて、飲むわよ」
 茉莉也は満面の笑みで言った。
「その時はね」
「先輩が、ですか」
「飲まれるんですか」
「当たり前でしょ」
 平然とした笑顔だった、実に。
「お酒が出るんだから」
「あの、私達をお祝いしてくれるんですよね」
「それでもなんですか」
「お酒があったら飲まないと」
 やはり平然とした言葉だった。
「お酒は飲むものだから」
「ううん、先輩らしいお言葉ですけれど」
「何か」
「とにかくいいわね」
 茉莉也は二人の顔を見たまま笑顔で言う。
「その時は盛大にやるわよ」
「飲んで食べてですか」
「そうして」
「そうね、食べるものはね」
 所謂酒のつまみはというのだ。
「すき焼きがいいわね」
「あっ、すき焼きですか」
「豪勢ですね」
「今はそんなに豪勢じゃないでしょ」
 すき焼きと聞いて顔をぱっと明るくさせた二人にだ、茉莉也はこう返した。
「昔よりもずっとね」
「輸入肉がありますから」
「だからですね」
「そう、それこそね」
 普通より多少贅沢なものになったというのだ、今では。
「輸入肉は安いから」
「オーストラリアとかのですね」
そっちのお肉が」
「そうそう、ステーキもね」
 かつてはご馳走の代名詞だったこれもだというのだ。
「今じゃね」
「昔よりはずっと安くなったんですよね」
「輸入肉があるから」
「確かに日本の牛は美味しいわ」
 輸入肉は固いとよく言われている、日本人は柔らかい肉が好きなのでどうしても日本の牛肉の方が高いのだ。
 だがだ、茉莉也はその安い輸入肉についてこう言い切った。
「けれどね、安いことはね」
「いいことですね」
「それだけで」
「ましてオージービーフだと安心だし」
 品質面でもだというのだ。
「だからいいのよ」
「輸入肉で、ですね」
「買って食べるのなら」
「庶民がどうとかは言わないわよ」
 それは何故かというとだ、茉莉也はテレビでコメンテーターやらキャスターが庶民的だの庶民の為だの言う言葉に胡散臭いものを感じているからだ。そうした人間こそ多くの収入を得ていて『庶民』とはかけ離れていることも知っているからだ。
「そんな胡散臭い言葉はね」
「それはですか」
「仰らないんですか」
「ええ、私はね」
 このことはしっかりと言う茉莉也だった。
「だから安心してね」
「ううん、安心とかはしませんけれど」
「先輩のお考えはわかりました」
「そういうことでね、とにか
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