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八条学園怪異譚
第五十九話 時計塔の話その二

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「あれだけはね」
「ですよね、地震が起こったらシェルターも」
「壊れたりしますよね」
「空襲は防げてもね」
 空襲は上からだ、しかし地震は下からだからである。
「そっちはね」
「難しいですよね」
「あまりにも酷いと」
「出入り口が壊れたりとか」
「中も滅茶苦茶になるとか」
「地震はこの世で最悪の災厄の一つよ」
 茉莉也もこう言う、そこまで恐ろしいものだと。
「それこそ悪い妖怪や悪霊よりも怖いから」
「この世で最も怖いものですよね」
「それになりますよね」
「ええ、本当にね」 
 茉莉也も地震への嫌悪を隠さない、嫌悪と言うよりは恐怖だろうか。
 その話をしつつだ、茉莉也は二人をぱっと放した。そのうえで解放されたことに呆気に取られる二人にこう言った。
「まあ地震のことは今は置いておいてね」
「あっ、はい」
「地震のことはですか」
「備えるだけ備えてね」
 事前のそれは必要だというのだ。
「そういうことでね、とにかくあんた達次でね」
「最後ですね」
「いよいよですね」
「そうよ、泉よ」
 そこに辿り着くというのだ、二人が。
「時計塔の最上階がそうだったとは思わなかったけれど」
「あそこに行けばですね」
「泉に行けるんですね」
「そう、本当に最後よ」
 次でだとだ、茉莉也は二人に言うのだ。
 そうしてだ、一旦立ってそのうえでベンチに座ったままの二人に向かいなおってそのうえで微笑んでこう述べた。
「次でね」
「私達の泉を探すことも」
「それもですね」
「あと学校の怪談場所全部巡ったから」
 時計塔以外の場所もだというのだ。
「次で最後よ」
「それで時計塔では何が起こるんですか?」
 聖花は泉でもあり怪談場所でもある泉のことをここで問うた。
「あそこは」
「あそこね、十二時になったらね」
「その時にですか」
「外から見えるって言われてるのよ」
「外からですか」
「そう、外からね」
 つまり時計塔の外から見えるというのだ。
「時計塔の最上階の窓にいる筈のない人が」
「その人は」
「日下部さんよ」
 あの彼だというのだ、その人は。
「あの人実はあそこが好きだから」
「それでなんですか」
「十二時にはですか」
「あそこにおられるから」
 それで外から見えるというのだ。
「あの人はね」
「そうなんですか」
「あの人が」
「その前はろく子さんがいたりしたのよね」
 彼女がいた時もあったというのだ、茉莉也は二人に話す。
「だからあそこに出るのは美人だったり軍人さんだったりするのよ」
「時計塔の番人じゃなくてですか」
「あの人達がですね」
「そう、おられるのよ」
 夜の十二時に出て来るというのだ。
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