暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
血塗れ交響曲
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れない?」
「ハッ!別に殺しゃあしねェよ。そっちの方が面白そうだ」
「………………ありがと」
相も変わらず表情を消した顔で頷き、再度蒼い髪を持つ女性は身体の向きを変える。
紅衣の少年に、向き直る。
シュッ、キンッ。
音が響き、それまで空だったリータの手に短剣が握られていた。レンの持っている片刃の短刀とは違い、両刃の、西洋の剣だ。神話とかに出てきそうな奴である。実践用というよりは、装飾用といっても差し支えがないかもしれない。
「そんな剣で……僕を殺せるの?」
「心配しないで。手入れはしたし、今のアナタだったらコレでも充分だとお姉さんは思うけど?」
「…………………」
吐き気がした。
殺意でも、悪意でも、害意でもない。
感情の塊をぶつけられて、吐き気がした。
「震えてるじゃないか」
「…………え?」
「ねーちゃんの身体、震えてるじゃないか」
でも、だからこそ、言った。
目の前の仇を殺そうか。
目の前の友を助けるか。
二つの意思に振り回され、疲れきってしまった女性に。
疲れきって、憑かれきった女性に。
「か、関係ないでしょ。それより、言うことくらいあるんじゃないの?『助けて』とか、い、『命だけは』とか………」
「ないよ」
思わずという風に震えたその言葉の羅列に、レンは思考する暇もなく即答した。
普通の音程で言ったはずなのに、ヒクッと引き攣ったようにリータの肩が揺れた。
「なん、で………?」
「悪人にも友達があるし、殺人者にも家族はいる。殺すんだったら、その人達に殺される覚悟くらいは持ってるよ」
「………………………」
カタカタ、カタカタ、と。
震える切っ先の短剣を持つ女性は、震える身体を押し留めて、震える唇をこじ開けるようにして言葉を紡いだ。
「何でよぉ………」
ツゥ、と透明な煌きが頬を伝う。
それをレンは、黙って見る。ぴったりと口を閉ざしながら、見る。
「何で、言わないのよぉ……」
嗚咽が、夜の丘の中に響き渡る。それは虫のさざめきに溶け込み、交響曲のように奏で始める。夜の闇が切り裂かれていく。
トスッ、と。
短剣が震える手の中から零れ落ち、草地の上に突き刺さった。
「言いなさいよ、『助けて』って。『殺さないで』って。そしたら――――」
「つっまんねェなァ」
四肢を地に付けて泣くリータの言葉を遮ったのは、野太い不協和音。
顔を付き合わせる少年と女性の脇で、一人の男が立ち上がった。
ニィ、と引き裂けるように嗤い。
ニィ、と焼け爛れたように嗤う。
《凶獣》が嗤っていた。
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