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久遠の神話
第九十話 家族の絆その九
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 そこから白い中にまで入れて取って口に入れる、そのうえで。
 チーズケーキの甘い、しかも濃厚な口の中とりわけ舌の上全体を支配する柔らかい甘さを感じつつ姉に言った。
「見ましょう」
「そういうことでね、では私もね」
「見守られるのですね」
「打てる手は全て打ったから」
 だからだというのだ。
「もう何もしないわ、彼については」
「基本としてはですね」
「そうよ、それにしてもケーキだけれど」
「ロシアのケーキですか」
「あれも食べてみたいわね」
 一度だ、そうしてみたいというのだ。
「そう思っているけれど」
「八条百貨店の食品売り場に行けば」
 あるとだ、豊香は智子に述べた。
「あると思いますが」
「あの百貨店ね」
「そうです」
 八条百貨店は全国にあるがこの神戸に本店があるのだ、八条グループの本拠地は神戸にあるからである。
「そこに行けば」
「そうね、ではね」
「それで」
 こうした話もした二人だった、とにかく今はコズイレフの動きを見守るだけだった。
 コズイレフは自室で学園で知り合った日本人の友人達と話していた、日本の学生の部屋、木の床にベッドやテレビがある部屋で飲みながら話をしている。勿論彼が飲む酒はウォッカである。それをストレートで飲んでいる。
 その彼にだ、日本人の友人達はこう言った。
「それにしてもよく飲めるな」
「ウォッカをストレートか」
「それ九十はあるよな、アルコール度」
「それでも飲めるんだな」
「はい、ロシアではいつもです」
 穏やかな笑顔でだ、コズイレフは彼等に丁寧な口調で答える。
「飲んでいますので」
「だから日本でもか」
「飲んでいるんだな」
「そのウォッカを」
「しかもストレートで」
「お酒はこれです」
 表情も穏やかだ、まるで争いなぞ知らない様な顔での言葉だ。
「飲むのなら」
「ウォッカか」
「それなんだな」
「僕は。しかし皆さんは」
「ああ、これだな」
「これがいいんだよ」
 彼等が飲んでいるのは焼酎だった、それぞれ黒糖焼酎を飲みながらそのうえでコズイレフと話している。つまみは魚の干物等だ。コズイレフもそれだ。
 コズイレフはその魚の干物を食べながらだ、彼等に言う。
「ロシアにいる時は」
「ああ、どうなんだ?」
「どうやって暮らしてるんだよ」
「こうしてウォッカも飲みますが」
 それだけではなくとだ、熊の様な大きな身体だが威圧感のない温厚そのものオーラを出してそのうえで言うのだった。
「一人で飲むことはないです」
「へえ、じゃあ彼女とかとか」
「友達とか」
「彼女はいないです」
 このことは素直に苦笑いで答える。
「残念ですが」
「ああ、彼女はか」
「いないんだな」
「欲しいですね」
 その寂しい笑顔で話して
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